Q1:女が交際中、実は引っかかっていた点は?
結衣とは、大学時代の友人の紹介で出会った。
出版社勤務で、派手ではないが知性があり、言葉選びが丁寧で、ワインの香りを静かに楽しめるような、品のある女性だな…というのが第一印象だった。
二度ほどデートをし、何となく付き合う流れになり、交際へ至った僕たち。
交際して最初の半年は、すべてがうまくいっていた。
僕の多忙なスケジュールにも結衣は理解を示してくれていたし、「無理しなくていいよ」と笑ってくれる結衣は、本当にいい女だったと思う。
食の好みも合うし、週末は近所でブランチを楽しみ、帰りに目黒川沿いを歩く…など、静かに流れていくような時間も心地よかった。
ただ結衣は意外に適当で、大雑把な性格だった。
例えばイタリアンレストランに行った時のこと。たしかに美味しいけれど、若干パスタがゆるい。
「ここのお店、美味しいね」
「うん。でももう少しアルデンテがいいな。結衣はそう思わない?」
「まぁそうかも…でもいいじゃん、美味しいんだから」
「結衣は能天気でいいね〜」
「能天気は、才能だから」
大きな口を開けて、笑う結衣。ただ僕が細かい性格なので、彼女のこの性格に助けられることも多かった。
「裕二ってさ、平日と土日でテンションが全然違うよね」
「まぁ平日は気が張っているからね…」
平日の夜もたまに会うことがあったけれど、家で食事となると僕は基本的に話したくなくて、黙って食事をすることが多かった。
「ねぇ裕二…」
「なに?ごめん、疲れているから後でいい?」
「そうだよね、ごめんごめん」
そう言うと、結衣は何かを察するのかそれ以上は何も言ってこないようになる。その気遣いはありがたかった。
「お風呂、どうする?先に入る?」
「うん、ありがとう」
そして朝が早いので、平日は早く寝ていた。だからその分、週末はちゃんと結衣と過ごすようにしていたし、僕なりにケアしていたつもりだ。
「結衣、次の休みに温泉行かない?」
「いいね〜行きたい!」
もちろん温泉旅行の旅費は僕持ちだし、車も出す。そしてこれに関しては、僕はうるさくすら言っていない。
「裕二、いつもありがとう」
「いえいえ」
旅行をすると楽しいし、仲も深まる。それに旅行中にケンカもほぼしてない。したといえば、高いお金を払ったのに、なぜか隣の部屋に子どもがいて、うるさかったことくらいだ。
「結衣、隣やばくない?子どもがいるんだけど」
「本当だね。すごいね、小さい頃からこんな素敵な宿に来られるなんて」
「あいつら、うるさ…マジでハズレだわ」
思わず僕が、そう言ってしまうほどだった。
「窓閉めたら大丈夫じゃない?」
「そうかな」
そんな会話をしたくらいで、他は平穏だった。そして僕が強く結婚を意識したのは、僕の母親に会った時のことだった。
この記事へのコメント
嫌過ぎる。