表紙カレンダー Vol.133

有村架純が語る「演じることを諦めない理由」。映画『花まんま』で見せた新境地とは

日々忙しく過ごす大人たちの心を、そっとほどくような力が、ソウルフードにはある。

今回は関西出身の女優・有村架純さんを、本場・大阪の味を伝えるお好み焼き店へご案内。

ソースの香ばしい香りを纏った懐かしの“粉もん”を味わって、彼女は何を思うだろうか。



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「生まれ故郷の関西と、この東京。居場所がふたつある感覚です」

有村架純

雑居ビルの入り口から階段を上ると、予想に反したムーディーな雰囲気の店が出現


有村架純さんが本誌の表紙を飾るのは今回で3度目。

最初のロケーションは、北品川にある日本最高峰のフレンチレストラン。その次は荒木町の路地裏にたたずむ日本料理の名店。そして、銀座四丁目にあるこのお好み焼き店『OSAKAきっちん。』だ。

さすがは数々の賞に輝く女優である。有村さんはいずれの撮影においてもその店の雰囲気にすっとなじみ、空間や料理をよりいっそう魅力的に見せてくれたが、今回は饒舌でもあった。

自身にとってのソウルフードであるお好み焼きや焼きそばに、まさに魂が揺さぶられたのかもしれない。

聞くと、生まれ育った兵庫の実家と大阪は車で30分ほどの距離。

思い出深い場所を尋ねると、JR大阪環状線の天満駅に程近い子どものための博物館「キッズプラザ大阪」を挙げ、「幼い頃は週末になると3歳上の姉と一緒に放り込まれ、両親の買い物が終わるのを待つのが習わしでした」と明かした。

女優の道を進むため、生活拠点は17歳で東京へ。だが、映画の撮影や舞台挨拶などで大阪の地を度々踏むことになった。この4月25日に公開される映画『花まんま』でも。

「大阪の下町が舞台の作品で、撮影は京都の太秦にある撮影所をベースに滋賀や神戸、大阪で行われました。各地を転々としたことで改めて感じたのですが、やっぱり大阪の人は面白い。

例えばタクシーの運転手さんがやたらに話しかけてくるんですよ。『今日はクルマが全然おらへんから、道がめっちゃ空いてますわ〜』って」

都会というところは、とかくドライでコミュニケーションの機会も希薄になりがちだが、大阪の人は人懐こくて人情味にあふれている。

それはそうと、有村さんの大阪弁は流暢でリアルだ。出自を思えば当然だが、タクシーの車内でのやり取りをありありとイメージさせるのは、技量がある役者ならでは。

映画『花まんま』でも、有村さんや、主演の鈴木亮平さん、鈴鹿央士さんなど関西出身の役者が巧みな台詞回しで物語に説得力を与えている。

関西から上京して14年。経験値が増えたからこその、有村架純のマイルール。


スクリーン上では有村さんの唯一無二の存在感も健在だ。

本作で扮するのは“秘密”を持った風変わりなキャラクターではあるものの、子役が演じる幼少期にまとまった尺が割かれるので、出演シーンは限られる。

にもかかわらず、彼女の芝居は心に棲みつく。

有村架純

鉄板があるカウンターの上には強力なダクトシステムを完備し店内の換気を徹底しているので、会社帰りやデートにも利用しやすい。「これなら食事に集中できますね」と、有村さんはソース焼きそばをうれしそうに口へと運んだ


「担当する役には自分自身が一番愛情を注いでいるつもりなので、そのように評価していただくのは光栄なことです。

私はキャラクターの濃い役を演じる機会が少なくて、演技を始めたばかりの頃は、印象に残らないと酷評されました。悩みに悩んで自分なりに試行錯誤を重ねまして、そのうちにあることが分かったんです。自分の熱量がそのままスクリーンに映し出されてしまうと。

だから、私は演じることを妥協できない、諦めてはいけない、と思うようになりました」

振り返れば、彼女は過去のインタビューでこう話していた。

「自分に与えられた役柄を掴みたいという思いから、よくその人生を自分なりに考えてノートにまとめています」

その後、大河ドラマなどさまざまな現場で経験値を高め、ある境地に到達した。

「作品はいろいろな立場の方と作り上げるもの。譲れない価値観があったとしても、全体が良い方向に向かうように流れに身を委ねることも大切です」

その“マイルール”を深掘りすると、こんな声も聞こえてきた。

「経験を重ねれば重ねるほど知恵が付いて自己主張が強くなりがち。でも、本来はみんなが平等であるべきだから、引く配慮も必要。

『花まんま』においては折に触れて話し合いの場が持たれたので、撮影現場はクリーンな空気で満たされていた。それが心に届く作品作りを後押ししたと思っています」

「素晴らしい出合いがあった分、恩返しをしていきたいんです」


俯瞰することも心得た有村さんはすっきりとして晴れやかで、話していると心が浄化されるよう。

その感想を告げると、彼女は照れくさそうに笑った。

有村架純


「おかげさまでこれまでいろんな役に出合ってきました。自分とは価値観が違う人物だったとしても、割り当てられたからには責任を持たなければいけないので、撮影に臨む前にその心の奥をひたすら想像します。

例えば自分を傷つけるような言葉を吐く人物だったとしたら、なぜそうしてしまうのかを考える。悪人だったとしても、理解はしたい。歩み寄れるところを探し出せなければ、違和感にとらわれたまま作品を作ることになってしまうので。

そんな作業を続けていたら、いつしか価値観の違う人を認めたり、許したりすることが自然とできるようになりました。新しい役を得るたびに、他者への眼差しも更新されていくようです」

この先も女優・有村架純は他人の人生を演じ続ける。

目下、興味を持っているのは舞台。新しい自分を発見するべく、あえて不慣れな環境に身を投じたいという。また、職業ものをベースにした作品にも参加したいらしい。

「とくに命を扱う医療ドラマに興味があります。大切な人との別れは誰もが共感できること。その尊さを自分の芝居を通して伝えられたら。

人生に困難は付き物ですが、生きてさえいればなんとかなると思うのです。そんな祈りを作品に込めたい」

言葉に力がこもっていてぐっときた。思い出すのは「演じることを諦めてはいけない」というくだり。

もっと、もっと、と新しい表現を追求する彼女は、これからも作品を通じて希望の扉を開いてくれるだろう。そして観る者の心に棲みつくに違いない。

■プロフィール
有村架純 1993年生まれ。兵庫県出身。女優。最新作は、朱川湊人さんの直木賞受賞作をヒットメーカー・前田 哲監督が映画化した『花まんま』。今年には東野圭吾さんの推理小説が原作の映画『ブラック・ショーマン』の公開も控えている。

■衣装
ワンピース¥220,000〈ファビアナフィリッピ/アオイ TEL:03-3239-0341〉、ネックレス¥94,600、リング¥137,500〈ともにプライマル Mail:support@prmal.com〉


▶このほか:「元々、目標や夢って全然なかったけれど…」櫻坂46・山﨑天、19歳の描く未来予想図



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