2025.04.16
表紙カレンダー Vol.133日々忙しく過ごす大人たちの心を、そっとほどくような力が、ソウルフードにはある。
今回は関西出身の女優・有村架純さんを、本場・大阪の味を伝えるお好み焼き店へご案内。
ソースの香ばしい香りを纏った懐かしの“粉もん”を味わって、彼女は何を思うだろうか。
「生まれ故郷の関西と、この東京。居場所がふたつある感覚です」
有村架純さんが本誌の表紙を飾るのは今回で3度目。
最初のロケーションは、北品川にある日本最高峰のフレンチレストラン。その次は荒木町の路地裏にたたずむ日本料理の名店。そして、銀座四丁目にあるこのお好み焼き店『OSAKAきっちん。』だ。
さすがは数々の賞に輝く女優である。有村さんはいずれの撮影においてもその店の雰囲気にすっとなじみ、空間や料理をよりいっそう魅力的に見せてくれたが、今回は饒舌でもあった。
自身にとってのソウルフードであるお好み焼きや焼きそばに、まさに魂が揺さぶられたのかもしれない。
聞くと、生まれ育った兵庫の実家と大阪は車で30分ほどの距離。
思い出深い場所を尋ねると、JR大阪環状線の天満駅に程近い子どものための博物館「キッズプラザ大阪」を挙げ、「幼い頃は週末になると3歳上の姉と一緒に放り込まれ、両親の買い物が終わるのを待つのが習わしでした」と明かした。
女優の道を進むため、生活拠点は17歳で東京へ。だが、映画の撮影や舞台挨拶などで大阪の地を度々踏むことになった。この4月25日に公開される映画『花まんま』でも。
「大阪の下町が舞台の作品で、撮影は京都の太秦にある撮影所をベースに滋賀や神戸、大阪で行われました。各地を転々としたことで改めて感じたのですが、やっぱり大阪の人は面白い。
例えばタクシーの運転手さんがやたらに話しかけてくるんですよ。『今日はクルマが全然おらへんから、道がめっちゃ空いてますわ〜』って」
都会というところは、とかくドライでコミュニケーションの機会も希薄になりがちだが、大阪の人は人懐こくて人情味にあふれている。
それはそうと、有村さんの大阪弁は流暢でリアルだ。出自を思えば当然だが、タクシーの車内でのやり取りをありありとイメージさせるのは、技量がある役者ならでは。
映画『花まんま』でも、有村さんや、主演の鈴木亮平さん、鈴鹿央士さんなど関西出身の役者が巧みな台詞回しで物語に説得力を与えている。
関西から上京して14年。経験値が増えたからこその、有村架純のマイルール。
スクリーン上では有村さんの唯一無二の存在感も健在だ。
本作で扮するのは“秘密”を持った風変わりなキャラクターではあるものの、子役が演じる幼少期にまとまった尺が割かれるので、出演シーンは限られる。
にもかかわらず、彼女の芝居は心に棲みつく。
「担当する役には自分自身が一番愛情を注いでいるつもりなので、そのように評価していただくのは光栄なことです。
私はキャラクターの濃い役を演じる機会が少なくて、演技を始めたばかりの頃は、印象に残らないと酷評されました。悩みに悩んで自分なりに試行錯誤を重ねまして、そのうちにあることが分かったんです。自分の熱量がそのままスクリーンに映し出されてしまうと。
だから、私は演じることを妥協できない、諦めてはいけない、と思うようになりました」
振り返れば、彼女は過去のインタビューでこう話していた。
「自分に与えられた役柄を掴みたいという思いから、よくその人生を自分なりに考えてノートにまとめています」
その後、大河ドラマなどさまざまな現場で経験値を高め、ある境地に到達した。
「作品はいろいろな立場の方と作り上げるもの。譲れない価値観があったとしても、全体が良い方向に向かうように流れに身を委ねることも大切です」
その“マイルール”を深掘りすると、こんな声も聞こえてきた。
「経験を重ねれば重ねるほど知恵が付いて自己主張が強くなりがち。でも、本来はみんなが平等であるべきだから、引く配慮も必要。
『花まんま』においては折に触れて話し合いの場が持たれたので、撮影現場はクリーンな空気で満たされていた。それが心に届く作品作りを後押ししたと思っています」
「素晴らしい出合いがあった分、恩返しをしていきたいんです」
俯瞰することも心得た有村さんはすっきりとして晴れやかで、話していると心が浄化されるよう。
その感想を告げると、彼女は照れくさそうに笑った。
「おかげさまでこれまでいろんな役に出合ってきました。自分とは価値観が違う人物だったとしても、割り当てられたからには責任を持たなければいけないので、撮影に臨む前にその心の奥をひたすら想像します。
例えば自分を傷つけるような言葉を吐く人物だったとしたら、なぜそうしてしまうのかを考える。悪人だったとしても、理解はしたい。歩み寄れるところを探し出せなければ、違和感にとらわれたまま作品を作ることになってしまうので。
そんな作業を続けていたら、いつしか価値観の違う人を認めたり、許したりすることが自然とできるようになりました。新しい役を得るたびに、他者への眼差しも更新されていくようです」
この先も女優・有村架純は他人の人生を演じ続ける。
目下、興味を持っているのは舞台。新しい自分を発見するべく、あえて不慣れな環境に身を投じたいという。また、職業ものをベースにした作品にも参加したいらしい。
「とくに命を扱う医療ドラマに興味があります。大切な人との別れは誰もが共感できること。その尊さを自分の芝居を通して伝えられたら。
人生に困難は付き物ですが、生きてさえいればなんとかなると思うのです。そんな祈りを作品に込めたい」
言葉に力がこもっていてぐっときた。思い出すのは「演じることを諦めてはいけない」というくだり。
もっと、もっと、と新しい表現を追求する彼女は、これからも作品を通じて希望の扉を開いてくれるだろう。そして観る者の心に棲みつくに違いない。
■プロフィール
有村架純 1993年生まれ。兵庫県出身。女優。最新作は、朱川湊人さんの直木賞受賞作をヒットメーカー・前田 哲監督が映画化した『花まんま』。今年には東野圭吾さんの推理小説が原作の映画『ブラック・ショーマン』の公開も控えている。
■衣装
ワンピース¥220,000〈ファビアナフィリッピ/アオイ TEL:03-3239-0341〉、ネックレス¥94,600、リング¥137,500〈ともにプライマル Mail:support@prmal.com〉
▶このほか:「元々、目標や夢って全然なかったけれど…」櫻坂46・山﨑天、19歳の描く未来予想図
さあ、月刊誌最新号「心躍る、大阪」を今すぐ手に入れよう!
今月の『東京カレンダー』は「心躍る、大阪」。東京が羨望の眼差しを向ける、”天下の台所”大阪の美食リストがこの一冊に!
月刊誌『東京カレンダー』は、毎月21日頃の発売です。お近くの書店、コンビニでお求めいただけます。
⇒紙版をお求めの方はこちらから
また、買いに行く時間がない方、近くのお店で売り切れてしまっている方には、インターネットでの購入もお勧めです。
⇒通常版はこちらから
⇒特別増刊はこちらから
最新号も過去号(約10年分)も、東カレアプリ内のコインで購入するのが一番お得です!(通常版のみ)
⇒アプリでのご利用はこちらから(iOSの方・Androidの方)
※最新版のアプリをダウンロードしてください。
【表紙カレンダー】の記事一覧
2025.03.13
Vol.131
「一緒にディズニーシーに行ったことも…」FANTASTICSの八木勇征×中島颯太、ふたりだけの鮨時間で見えた強い絆とは
2025.03.10
Vol.130
「私、頑張ってる」芳根京子が神楽坂の鮨店でこぼした、素直なひと言の裏側とは
2025.02.18
Vol.129
目黒蓮×佐野勇斗が、ラグジュアリーホテルのスイートで語り合ってみた。お互いの第一印象とは…
2025.02.10
Vol.128
「なぜ、こんなにも輝いているんだろう…」浜辺美波の目が、思わず釘付けになった女性とは
2025.01.17
Vol.127
「イケメン&モテ男。今まで演じた中でいちばん自分に近いでしょ(笑)」永瀬廉が語った本音とは
2025.01.14
Vol.126
乃木坂46を卒業したあと、グアムを旅した山下美月。完全フリーの2週間していたこととは?
2024.12.22
Vol.125
「2024年、廉のあの“おいっすー”は最強だった」虎ノ門のホテルでKing&Princeが語った激動の一年
2024.12.17
Vol.124
「26年の人生の中でも、すごく大きな出来事」港区を席巻した和食店で語った、齋藤飛鳥の胸の内とは
2024.11.02
Vol.123
「あぁ、これはご褒美だ~♡」女優・松本まりかが、とろける旅を楽しんだひととき
2024.10.05
Vol.122
世界を見据えて突き進むBE:FIRSTの、SHUNTO、RYOKI、SOTA、3人の絆とは?
おすすめ記事
2025.04.10
表紙カレンダー Vol.132
「メンバー全員で行くなら、あの焼肉店しかない!」Aぇ! group正門良規の東京・ご褒美メシ
- PR
2025.04.14
「次の乾杯、何を選ぶ?」一流レストランが認める新たなシャンパーニュの魅力をモデル・松島花が語る
2024.10.19
「まだまだ流されていたいんです」港区女子の大島麻衣が考える、引き際とは?
2022.04.01
不動産選びの答えあわせ
年収1,500万超のハイスぺ男子の婚活に異変。“恋愛と不動産”にまつわる最新事情とは
- PR
2025.03.21
外食続きで疲れ気味…?グルメな東カレ編集者が絶賛する“美味しいエネルギーチャージ法”
2016.04.15
人気モデル・石田ニコルが初体験!鮨は"お好み"でも怖くない!?
2020.07.03
金曜美女劇場
霞が関出身の美女が女優に転身!華麗なる遍歴の彼女が歩んできた茨の道
2020.08.20
東京SNAP
熱帯夜の丸の内OLを激写!ビール好き美女16名のリアルを覗き見してみたら・・・
2022.06.18
Transform〜あなたは今の自分に満足してますか?〜
「私も綺麗になりたい!」同窓会で美の格差を突きつけられた女が始めた3つのこと
2019.09.29
ホテルのスイートルームで美女と戯れる東野幸治が、想像を超える艶っぽさだった!
東京カレンダーショッピング
ロングヒット記事
2025.04.09
運命なんて、今さら
34歳で彼女と初めての海外旅行。男が旅行中ずっとソワソワしていたワケ
2025.04.07
1LDKの彼方
結婚前の同棲ってやっぱりNG?1年後、結局別れて住むことになったワケ
2025.04.12
男と女の答えあわせ【Q】
結婚願望のない33歳男が、突然プロポーズを決意。2泊5日の海外旅行で気持ちが変化したワケ
2025.04.10
TOUGH COOKIES
「オレたちの関係に名前をつけると…」曖昧な関係の彼に本音を言われた女がショックを受けたワケ
2025.04.13
男と女の答えあわせ【A】
「結婚願望はない」そう言っていた男に結婚を決意させた、旅行中の30歳女の言動とは