かわいく生きられない女たち Vol.8

毒吐き用のSNSアカウントが、彼の親にバレた!慶應幼稚舎出身、27歳女の裏の顔とは



食事を終えて、ひとり暮らしをしている赤坂の自宅に戻る。


こだわりのインテリアでそろえたお気に入りの空間なのに、どこか空虚だ。

リビングのソファに座り、私が固定していた過去の投稿を削除した。そして、健斗とクラブイベントで撮ったツーショットを消そうとした瞬間。インターホンが鳴った。

コンシェルジュの女性から「フードデリバリーの方です」と伝えられ、ぼんやりと「はい、どうぞ」と反射的に返す。

― あれ。そんなの頼んだっけ?部屋番号、間違えてるんじゃない?

我に返ると、再びインターホンが鳴った…。

二度目のインターホンは、エレベーターのオートロックを解除するためだった。

応答する際にカメラを見ると、映っていたのは、配達員ではない。

― 健斗だ!開けた方がいい?でも追い返すと、コンシェルジュの人に怪しまれるし…。

私は解錠して、数秒後に彼を迎え入れることになった。

「この黒いリュックで良かったよ。コンシェルジュの人に疑われなかったし」

無邪気に笑う彼を、リビングに通しながら、私は言った。

「どうして…?」

「ん、デザートがまだだったからさ」

健斗は「じゃじゃーん」と、リュックからケーキ箱を出した。近くのホテルに入っている、レストランのロゴが入っている。

― ここに来るまでに、買ってきてくれたんだ…。

「閉店ギリギリだったから、とりあえず残ってるの全種類買ってきた!」

リビングテーブルの上に箱を置いて、開けてみる。そこには宝石のようなケーキがたくさん入っていた。


ソファの隣に腰かけた健斗に、私は礼を言う。彼はとっておきの笑顔を見せてくれた。

「人につらいって言えないし、人に頼ることも苦手。そんな子が彼女なら、当然でしょ」

「え。まだ私、彼女でいていいの?」

「え。なに、勝手に契約解除してるの?」

沈黙があった。顔を近づけて、問いかけられる。

「仮にもう彼氏彼女じゃなくなったとして、どうしてそんなに平然としてられるわけ」

じりじりとにじり寄って来る。後ずさりし続けて、背中がアームチェアにぶつかる。完全な沈黙が数秒間流れて、健斗は、はーっとため息をついた。

「まあ、母さんもデリカシーないっていうか…見つけても黙ってなよって感じだよね」

いつもの明るい声に戻っている。リラックスしている彼に、私は声をかけた。

「ねえ、一緒に食べない?ワインもあるの。開けてくるわね」

「それもいいし」と彼は言った。「写真、撮らなきゃ。スマホかして?」

ワインをあけて、次から次へとケーキをつまんでいく。彼は口の端にクリームをつけて、まるで少年のようだ。

「ふふ。健斗って子どもっぽいところあるよね」

「言ったな。僕をからかうなんて100年早いよ」

「100年一緒にいてくれるってこと?」

彼は挑発的な笑みを浮かべた。

「もちろん。瀬里奈とずっと一緒にいたい」

ふたりでさっき撮ったケーキの写真を見た。よく撮れている。私はそれらをXにあげずに、アカウントを消した。

100年のうちに、ふたりの写真をたくさん撮ろう。

これが、正しいスマホの使い方だ。


▶前回:親は弁護士・慶應幼稚舎出身の外銀勤務の27歳お嬢さま。人には言えない、彼女が抱える悩み

▶1話目はこちら:メガバンク勤務、28歳ワセジョの婚活が難航するワケ

▶Next:11月28日 木曜更新予定
続:ワセジョの憂鬱「東京って治安が悪すぎ。時代は審査制!」【前編】

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この記事へのコメント

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No Name
彼のお母さんと和やかな食事の席で、親の愚痴とかベラベラベラベラと喋るもんじゃない😂
X で毒吐きしてたとかそんな事まで言うバカいないから。
2024/11/21 06:0125
No Name
コンシェからのインターフォンで、頼んでもいないデリバリーが来たと言われたら、反射的に返す言葉は「うちは頼んでませんが.....」になるけどなんで「はいどうぞ」 防犯上どうなのww
2024/11/21 06:4923
No Name
彼ママはXすら分からなかったなら、Xも旧Twitterもアカウント作ってないんだよね?
どうやって瀬里奈と息子の写真を探しあてたのか含めて全体的に良く分からなかった。 
100年云々も寒々しい。ママには嫌われたけど別にいいや的な?
何なんだこの話…
2024/11/21 05:3418
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