2024.10.21
SPECIAL TALK Vol.121
パラスポーツの認知度を高め、気軽に始められるように
金丸:競技者としては今年引退され、今はトレーナーとして活動されています。立場の違いに戸惑うことはありませんか?
山本:自分でやるのと人に教えるのは、やっぱり違いますね。自分の頭の中では「こうしたらできる」と描けていても、それを言葉で相手に伝えるのは難しいと実感しています。
金丸:それはよく分かります。私も会社では自分がプレイヤーとして動くのが半分、いろいろなプロジェクトリーダーへのコーチングが半分くらいです。
山本:金丸さんはどちらがお好きですか?
金丸:正直、自分でやるほうが好きですね。でも、企業としては私が何でもかんでもやるのは無理だし、人を育てないといけない。
山本:アスリートも同じです。
金丸:人を育てるときって、こちらの言葉がきちんと伝わらないことを前提にしないといけません。「100回ぐらい言ってるよね」と思うことはいっぱいあるんです(笑)。でも同時に、いくら言っても伝わらないと諦めてはいけない。
山本:伝える努力をしないといけない、ということですね。
金丸:そうですね。もちろん時間はかかります。あるリーダーが部下を叱咤激励しているのを横で聞いていると、「自分が言ったこと、そっくりそのまま言ってるけど、まだ本質が分かってないな」と感じることもあります。でも、そこから育つことを期待して、じっと堪えることが大事です。
山本:やっぱりコーチングは、忍耐なんですね。
金丸:でも、我慢するばっかりは良くないので、適度に体を動かしながら(笑)。だって、陸上選手としては引退しても、スポーツは続けるんですよね?
山本:実は最近、ゴルフにハマっているんですよ。80前半はちょこちょこ出るようになったけど、70台が出なくて、今苦しんでいるところです。
金丸:苦しむっていっても、山本さん、すごいですよ。私なんかまだ100前後ですから(笑)。
山本:やってみて思うのが、ゴルフって障害者がスポーツを始めるのに適した競技だと思うんです。障害の程度や部位にもよりますが、走るわけじゃないので、普通の義足でも楽しめるし。
金丸:ちなみに一般的な義足って、どのくらいの値段なんですか?
山本:80万円くらいしますが、身体障害者福祉法のおかげで、自己負担額は3万円くらいです。ただ、これはあくまで「歩ける義足」。それで走ったり跳んだりするのは、まあ無理ですね。
金丸:スポーツ用の義足は福祉の対象外なんですか?
山本:はい。だけど、義務教育過程に体育があるので、運動できる義足も対象にすべきではないか、と僕は考えています。
金丸:スポーツ用だと器具への負荷が大きそうですが、寿命も短いんですか?
山本:足のかわりになるブレードは、持って1年くらいですね。体と接続するソケットは2年か3年くらい。
金丸:なるほど。大人になら「趣味でやるんだから、自分で買ってね」でもいいのかもしれませんが。
山本:なので、スポーツ用の安い義足を作って広めようとしている民間企業もあります。東京パラリンピック前から少しずつ動きが出てきたので、もっと盛り上がっていけばいいなと。
金丸:個人的には「障害者競技」というくくりが、もっと違うかたちになったらいいのにと思っています。事故や病気は誰にでも起こり得るから、どんな状態の人でもスポーツが楽しめる世の中にしないといけません。障害者と健常者で分けるのではなく、一緒に混ざって楽しめる競技のあり方をもっと追求していきたいですよね。
山本:それこそゴルフだと、義足の人が一般の大会に出場しているケースもあります。ただ、ゴルフはパラリンピックの種目ではないんですよ。
金丸:メディアの注目度が違う?
山本:全然違います。どうしてもパラリンピックを中心に動いているところがあるので、「これからゴルフを頑張るので来てください」と言っても、記者の人たちも動きづらいようで。そういう風潮に風穴を開けるような仕掛けを考えなきゃいけないなって思っています。
金丸:ゴルフに陸上にコーチング、さらには環境の改善と、やることがいっぱいですね!よければゴルフコーチの資格を取って、私にも教えてください。
山本:さらに増えてしまいましたね(笑)。一つひとつ、しっかり取り組んでいこうと思います。
金丸:なかなか日の当たらない領域ですが、ハンディキャップがあってもスポーツに取り組める社会というのは、健常者にとってもいい社会のはずです。私にできることは限られるかもしれませんが、応援させていただきます。今日は本当にありがとうございました。
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