恋のジレンマ Vol.5

会社帰りに立ち寄った有楽町のバーで思わぬ出会いが。 大手IT勤務・29歳男はつい…

恋は、突然やってくるもの。

一歩踏み出せば、あとは流れに身を任せるだけ。

しかし、最初の一歩がうまくいかず、ジレンマを抱える場合も…。

前進を妨げる要因と向き合い、乗り越えたとき、恋の扉は開かれる。

これは、あるラブストーリーの始まりの物語。

▶前回:机に置き手紙を発見した25歳女。封筒を開くと、1通の便箋と“固い物体”が出てきて…


入会の決め手は…【前編】


「いや、森永。お前がワイン好きだったなんて知らなかったよ」

大手IT企業に勤める智樹は、職場の先輩・佐々木に連れられ、会員制のワインバーに向かって歩いていた。

「はい。最近ハマり始めて。それに僕、さっきみたいな騒がしい場所が苦手で…」

先ほどまで、職場の同僚たち7~8人で、有楽町にあるビアホールを訪れていた。

智樹はビールが嫌いなわけではないが、大きな声を出して会話を交わしながら酒を飲む環境を好まない。

30代も目前となり、落ちついた場所で静かに味わいたいという思いが強くなっている。

智樹は同僚たちの輪に入り切れず、それに気づいてくれた佐々木に声をかけられ、店を抜け出してきた。

背の高い佐々木の背中を追いかけるようにして、あとをついていく。

「まあ、俺も昔はビールばっかり飲んでたけどな…。ああ、ここだよ」

10分ほど歩いたところにあるオフィスビルのような建物の脇に、細い通路があった。

知らなければ素通りしてしまいそうな通路の先は、地下へと続く階段になっている。

地下へ降りて奥へと進むと、重厚感のある木製の扉が道を塞いでいた。

扉を開けて店内に入ると、目の前にカウンターテーブルがあり、10脚ほどの椅子が並ぶ。

「いらっしゃいませ」

カウンター越しに女性が立ち、「ボトルお持ちしますね」と脇に捌けていった。

一連の流れから、佐々木が頻繁に通っていることがわかる。

店内には小さくクラシックが流れており、ワインの香りがほのかに漂う。

大人の空間といった雰囲気に、やや気後れした。

「こちら、ソムリエの梨穂さんだ」

佐々木から紹介を受け、カウンターに戻ってきた女性と顔を合わせた智樹は、思わず息をのんだ。

― な、なんてキレイな人なんだ…。

横幅の広い大きな瞳に見据えられ、体が強張った。

なんとか声を絞り出し、挨拶を交わす。

胸の高鳴りがおさまらない。

久しぶりに味わう感覚だった。

この記事へのコメント

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読める小説がどんどん減って週に2-3連載程度の更新なら面白い話を読みたいと思ってしまうけど、それに反した内容で続きも気にならない話だとガッカリしてしまう。まぁもうアプリ開かなきゃいいんだけれど、これもある意味ジレンマ?!
2024/09/30 05:3020
No Name
梨穂には旦那様か彼氏がいるとかそんなオチは?
まぁダイエットする気になれたならそれだけでも良かったって事?!伊藤さんの寂しかったは大した意味ないと思うけど「まさか俺を好きって事?」とか、しょうもな。
2024/09/30 05:2115返信1件
No Name
「ボトルお持ちしますね」で一瞬ワインのボトルキープかよと思ったけど。普通に「いつもシャルドネでよろしいですか?」と聞けばいいのに。
なんだかちょっと怪しいワインバー? メンバーフィーぼったくりとか大丈夫か。 佐々木も梨穂が好きで散々貢いでたら借金苦でストレス抱え痩せ細った?訳じゃないよね。
2024/09/30 05:3913返信1件
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