恋のジレンマ Vol.4

机に置き手紙を発見した25歳女。封筒を開くと、1通の便箋と“固い物体”が出てきて…

◆前編のあらすじ
大手食品メーカーに勤める萌絵(26)は、社内運動会に参加し、同僚たちに手作り弁当を振る舞って高評価を得た。その流れで、同僚の板垣に毎週昼食を差し入れることに。しかし、実は萌絵は料理が苦手。弁当は、家事代行スタッフに依頼したものだった…。

▶前回:週1回、意中の彼にお弁当を作る25歳女。料理に隠された“後ろめたい秘密”とは


頼もしい味方【後編】


「板垣くん。実はあのお弁当、私が作ったものじゃないの…」

萌絵は、正直に伝えようと思っている言葉を頭の中で繰り返しながら、職場から帰宅した。

― やっぱりガッカリしちゃうかなぁ…。

板垣には、すでに3回も弁当を差し入れている。

どれも大好評で、作成者が別にいるなどと疑う様子もないので、今さら事実を公表できる状況ではない。

玄関からリビングドアを開けて中に入った萌絵は、出勤時の部屋の様子と若干の違いを感じる。火曜日の今日は、家事代行サービスを依頼している日なのだ。

担当してくれているのは、須間という30代後半の女性で、何度か顔を合わせたことがある。ややふっくらとした体形の穏やかそうなタイプの女性だ。

須間が、昼間のうちに訪ねて綺麗に部屋を掃除してくれているので、漂う空気がどこか澄んでいるように感じられる。

萌絵は、すぐにキッチンに向かい、冷蔵庫を開けた。

作り置きのおかずの入った容器の隣に、板垣に渡す弁当箱が並んでいる。

弁当箱を取り出し、蓋を開けてみる。

― うわぁ!美味しそう!

梅ぼし入りの鶏つくねにパプリカのマリネ、大葉入りの卵焼き。彩りのいいおかずがバランスよく盛り付けられていた。

にわかに湧きたった食欲に、先ほどまで頭を悩ませていた事案はかき消される。

萌絵はふと、リビングのほうに目を向ける。

― あれ…?何かしら…。

テーブルの上に、封筒のようなものが置かれていた。

たまに弁当に関するメモ書きが残されていることがあるが、それではなさそうだ。

封筒を手に取り、中に入った便箋を開いて目を通す。

かしこまったような文面を読み進めると、ある言葉が目に留まり、萌絵は眉をひそめた。

『しばらくお休みを頂きます。』

萌絵は、ゾワゾワッと胸がざわつくのを感じた。

この記事へのコメント

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No Name
普通に考えて、嘘をつかれて他人のお弁当を食べさせられてた事については、少なからず不快感を抱くと思う。板垣も萌絵に気があったとするなら、毎回弁当もらってるだけじゃなくてお礼の食事に誘うとかしてただろうに。 無理矢理作った変な話。
2024/09/23 05:1918
No Name
随分とまぁ都合よく書かれたストーリーだなと。
2024/09/23 05:1317
No Name
料理がうまい人や慣れている人は目分量で作っちゃうから、その人が作成した細かいレシピを参考にしたとしても、それほど味を寄せて作ることは出来ない。料理はそういう所が難しいなと思う。板垣のお母さんが家政婦の須間さんだったとのオチを期待したけど、違ったわ。
2024/09/23 07:2511
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