年収4,000万男子の恋愛事情 Vol.3

初デートで意外なお願いをする31歳女。なんとしても、ハイスペ男子を射止めたい彼女の作戦とは

「お客様、車内の温度はいかがですか?」
「さっきまで運動していたので、もう少し下げられます?」

平日の朝は、ジムに行ってから仕事に行くのがルーティンだ。

そして、プライベートも仕事も、移動手段はタクシー。

父に勧められて、以前は運転手を雇ったこともあるのだが、今は配車アプリのステータスが最上位になるほどタクシーを使い倒している。

東京ではそれが一番効率いいと思っているし、一応運転はできるが車は持たないスタンスだ。

― でも、もし家庭を持ったら車が要るかな…。


女性とデートするのが嫌いな男はいないだろうし、俺も好きだ。

でも、ひとりの女性と真剣に交際をして結婚をするという、最もスタンダードな人の幸せを追い求めることは、自分には縁のないことだと思っている。

だから、最近の俺は自分に好意を持ってくれている女性と、深い関係になることをずっと避けている。

関係に名前を付けずに、会いたい時にだけ会う方が気楽でよかったし、それでもいいと言ってくれる女性とばかり遊んでいた。

一方で、元太のように、たったひとりの女性と長く付き合っている人が羨ましいと思っている自分がいるのも確かだ。

― 俺にもそんな人が、いつかはできるのだろうか?

「こちらでよろしいですか」
「はい。ありがとうございます」

タクシーを降りた俺は、香澄が未来の彼女になる可能性を少し期待しながら、仕事の打ち合わせ場所に向かった。


デート当日の金曜19時。

店に現れた香澄は、食事会の時よりもさらに気合いを入れてきているような気がした。

彼女が着ているドレスは、文化服装出身で最近注目されている若手デザイナーの秋冬コレクション。彼とは知り合いなので、新作だということはすぐわかった。それに、編み込みを崩した今っぽいヘアも仕上がりが美しい。憶測だが、プロにやってもらったのだろう。

香澄のリクエストに答えて、選んだのは六本木の『LA CHASSE』。経営者仲間に教えてもらったのだが、ジビエが美味しいフレンチだ。

シェフが実際に仕留めたジビエが頂けるというので、俺も楽しみにしていた。

「香澄ちゃん、今日はどうしてジビエだったの?」

「う〜ん、友達でジビエ好きな子がいないから行く機会があまりなくて。それに…」

「それに?」

俺が聞くと、香澄が急にイタズラな表情になる。

「なんだか、野生の力強いパワーをもらえる気がしません?……って、どうします?このあと私、翔馬さんを襲ったりしたら」

「香澄ちゃんみたいな、かわいい子に食べられて死ぬなら本望だよ」

「え〜もう〜〜。そういう意味じゃないのにぃ」

そう言ったあとで頰を膨らませる香澄。

こういう仕草に胸打たれるほど、自分は若くない。

― いや、かわいいことはかわいいんだけど…。

彼女の年齢が31歳だということを鑑みると、つい冷静になってしまう自分がいる。

食事も終盤に差しかかる頃、香澄が俺に聞いた。

この間の食事会の中で、正直、誰がタイプでした?」

この記事へのコメント

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No Name
香澄の毒牙にかかり始めてる...しょうもない男だなぁ全く。
なんで、いの一番に香澄とデートして彼女になってくれたらいいなと期待までして🤷🏻‍♂️先週はこういう女マジで無理的な事言ってたはずなのに。変なの。
2024/09/27 05:1814返信1件
No Name
ジビエジビエ騒いだ割に何食べたのか等レストランでのシーンが全くなくてガッカリ。
カラス肉とかワニ肉もジビエの一種なんだよね。
2024/09/27 05:3213返信1件
キモい会話
どうします?私が翔馬さんを襲ったりしたら」
「香澄ちゃんみたいな子に食べられて死ぬなら本望だよ」
2024/09/27 05:349
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