2024.08.29
表紙カレンダー Vol.119今年でデビューから21年となる、俳優の松岡茉優さん。観る人を作品の世界に没入させる演技で、ドラマ・映画の主演も数多い稀有な存在。
現在は、主演ドラマ『ギークス~警察署の変人たち~』が放送中だ。
そんな松岡さんが、東京カレンダーに初登場!大好物という韓国料理を堪能してもらうべく、ビストロが手掛ける話題店にお連れした。
そこでの定番を味わって笑顔をみせる松岡さんが、食後に語った飾らない言葉をお届け!
第一線をひた走る俳優が、いかなる時も大切にしていること
『ポッポコリヤ』の壁にかけられたハングル語のネオンを見て、松岡茉優さんは「これは何て書いてあるんですか?」と店のスタッフに質問。
「本当は“乾杯”とお願いしたんですが、間違って“長い”という意味になっています」と回答されると、「えっ、そうなんですね(笑)」と盛り上がる。
実食の際には、くるりと背面にあった厨房を向いて「美味しいです」と笑顔で伝えるなど、入店してからすべてが気さくでチャーミングだ。
松岡さんは実際に大の韓国料理好きとのこと。
「韓国料理屋さんのメニューを開くと、ほとんどが“好き”。外で韓国料理を食べる時は自分の行きたい時にさくっと入ったり、わりとひとり飯派です。
ひとりだと2品くらいが限界なので、本当は3〜4人でいろいろなお料理をシェアしたいなとは思っています。
週に1回は行きますね。多いと週3〜4回食べますし、自分で作るぐらい好き。本格的なものではありませんが、キンパやスンドゥブ、トッポギ、キムチチゲなどは家で作ります」
フォーマルなレストランについては、「なかなか縁がないかもしれません」と話すが、憧れはあるとか。
「月に1回、自分へのご褒美として比較的贅沢なお店に目一杯お洒落をして行く趣味を持っているお友達がいて、普段気軽に行けないお店こそ服の選び甲斐があって、それも含めて特別なディナーとなるので、いいなと思いながら話を聞いています。
特別な時間を自分で演出するのが格好いい。お仕事でかわいいお洋服やお化粧をしていただける分、自分でそういうときめきを作ることをしていないのかも。でも、いつか挑戦したいです」
短い休みでも遠出して、普段はできない経験をつかみに行きたい
キャリアを積み重ねてきた中で、プライベートの過ごし方には変化も。
「遠出をすることのハードルが、私の中で年々下がっています。前までは、お休みを次の仕事までの英気を養う時間としか捉えられていなくて、体を休めることしか考えていませんでした。
でもいまは、いろいろと経験することも仕事への還元になると感じています。仕事と休みの繰り返しだと、どこか枯渇してしまうのかもと思い至って。
短い休みであっても少し遠出をして、普段は出合えない経験を掴みに行きたいなと。そういう時間が、心にも体にもよい気がしています。
最近だと、私は和菓子が大好きなので、遠くまで電車を乗り継いで和菓子を買いに行ってきました。それを持ち帰ってお茶を淹れてゆっくり食べるのが好きです」
いま遠出の目的に掲げるのは、各地域に根づいた伝統工芸を作る体験。
「自分の手で再現すると、いかにそれが難しいかとか、地域の歴史を知ることができるはずなので興味深いです」と、刺繍など細かな作業が好きな松岡さんらしい答え。
そんな風に休日の計画を膨らませるのも、俳優の仕事をひた走り続けているからこそ。
現在でいえば、主演ドラマ『ギークス〜警察署の変人たち〜』が放送中。警察署勤務のギーク(オタク)たちが、井戸端会議で事件解決をスーパーアシストする、これまでにない謎解きエンターテイメントである。
鑑識官を演じる松岡さんと、同僚を演じる田中みな実さん、滝沢カレンさんとの会話が“ゆるりと面白い”と好評だ。
本人も、「私はラジオやポッドキャストを聞くのが大好きで、ちょっと誰かと喋りたかったり、誰かの声が聞きたかったりする時に聴いています。そんな要素が、今回のドラマにもあるかなと思っていたので、そういう反響をいただいて嬉しかったです」と、視聴者からの反応を喜んでいた。
「“ありがとう”の言葉を書き合った手紙は私の大切な宝物です」
いまの仕事を始めて21年。どんな仕事でも、長く続けることで慣れが生じることもあるが、松岡さんから常に新鮮さや謙虚さを感じるのはなぜだろうか?
「今回の作品を経てまた思ったんですけれど、ドラマとなると、現場には総勢100人ぐらいのスタッフさんがいらっしゃる。
ただ、次のご縁を望んでも全員が再び集まることは、おそらく二度とない。だからこそ、出会いがとても嬉しい仕事だなと常に感じています。まさに毎回、一期一会だなと。
日々感謝を伝えないと、もう伝えられないかもしれないという気持ちを持ちつつ、いつかの再会を望みながら撮っています」
作品で出会った人たちへ、直筆の手紙を渡すことも少なくないと話す。
「手書きのお手紙だと、文字にも顔があるというか、その時の気持ちや雰囲気が文字にのるものだと思っています。だからお手紙を書くのもいただくのも嬉しいこと。
今回の現場はキャストの方もスタッフさんもお手紙を書く方が多くて、最後はお手紙交換会のようになって、みんなで“ありがとう”の言葉を書き合ったので、たくさんの新しい宝物が増えました。
お手紙はすべて自宅にとっていて、もう段ボール1箱じゃ収まらないぐらい。その文字を書いてくれた時間のことを考えると、やっぱりずっと大切にとっておきたいですね」
言葉といえば、松岡さんは昨年11月発売の著書『ほんまつ』や『Numéro TOKYO』のエッセイも面白い。文字から声が聞こえてきそうなのだ。
「書くことに執着すらあるように思っていて、対面でお話するより文字を書く方が私は向いていると思います。
対面だと相手の都合を気にしたり、顔色を伺ったりしてしまいがちで。でも文字だと嘘なく書いた言葉を何度も推敲できますし、お手紙でも、何度も読み返して大丈夫と思ってから渡しています」
それは松岡茉優さんという人間の感情を綴ったもので、演技の仕事とは別の話。でも、言葉に執着する素顔をもつ表現者の仕事に、信頼を置いてしまうのは致し方ない。
取材が終わると、「ありがとうございました。エッセイまで読んでくださって嬉しかったです」と松岡さん。
全体を通して、「嬉しい」という言葉がよく発せられた、穏やかな時間だった。
■プロフィール
松岡茉優 1995年生まれ、東京都出身。主演ドラマ『ギークス~警察署の変人たち~』(フジテレビ・木曜22:00~)が放送中。YouTubeで配信中のアニメ『あたしンちNEXT』の3~5話(8月5日~10月5日配信)に声優として参加。9月にはパルコ劇場での舞台『ワタシタチはモノガタリ』に出演する。
■衣装
ドレス¥120,825〈サンディ・リアング/リディア TEL:03-3797-3200〉、バッグ¥42,900〈ロー ソウル URL:https://rohseoul.jp〉、その他スタイリスト私物
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