2010.09.21
『幸せになる、 小さなお店。』 Vol.9Neo bistro
新境地で湧き上がる、探究心
「このカウンターの中に一度、入っちゃうと出られないし、逃げられないんです」と破顔一笑の山下九氏。人気店『ahill』でフレンチと鉄板焼きの融合という独創的スタイルを具現化。ひとつの道を極めたシェフが、8月に開いた新店は、12坪のビストロだった。
人ひとりがやっと通れるほどの幅しかないキッチンで、嬉々としてフライパンをガスコンロにかけ、炭火で肉を焼き、大きなコンベクションオーブンの温度を調整し、最後はカウンターの上で皿に丁寧に盛り付けている。「客席から全部見えちゃいますからね」。
ビストロを名乗るが、そこは手練の山下氏。テリーヌを作ればキノコと鶏肉を合わせて「つくねを食べているような味わい」にする。焼きナスで冷製スープときたら生姜風味のコンソメジュレを添える。前店で創案したスペシャリテ「フォアグラ入りハンバーグ」も健在で、自由闊達に旨いものを振る舞う姿勢に揺るぎはないのだ。
「鉄板焼きを名乗った『ahill』の時もそうでしたけど、今回もビストロという言葉だけをイメージして皆さんいらっしゃる。けれど、そのイメージを覆すのが大変でもあり、楽しくもあるんです」。
多彩な調理法を手にしたシェフはこれまでとは方向を異にする、無限の可能性を感じているに違いない。
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