未来のWISH LIST Vol.7

26歳、四谷で初の高級鮨デート。準備バッチリで入店したら大将に“あるコト”を言われ…



12月になり、未来は誕生日当日を迎えた。

今日は、笹崎と荒木町でお鮨の約束をしている。

― もう26歳か。今日ぐらいは特別な時間を楽しみたい。

未来は、会社帰りに丸ノ内線に揺られながら、先週末の悠斗とのデートを思い返す。

― 悠斗とのデート、楽しめなかったな。私、どうしたんだろう。

先週の誕生日祝いのデートに、悠斗はノープランでやってきた。いつも2人で行く店でご飯を食べ、その後、アウトレットで買ったというミニ財布をプレゼントされた。

― 確かに、前に可愛いって言ったお財布だったけど…。

未来は、心のどこかで、もっと素敵な1日を期待していたのだ。

ボストンでの笹崎との時間と、悠斗との週末を、どうしても比べてしまう。そんなモヤモヤもあってか未来は、笹崎とお鮨を食べに行くことを悠斗に伝えてしまった。

― あの時の悠斗の反応も、がっかりだったよ。

「すげえ!」

悠斗は少年のように目を輝かせて言った後、興奮気味に続けた。

「変わった鮨とか、高い酒とかたくさん飲んできなよ。どうせそのおじさんが払うんでしょ?」

嫉妬されたいわけではなかったが、なんだか拍子抜けしてしまった。

― ああ、もう悠斗のことを考えるのはやめよう。

ふと思い立って、未来はスマホを出すと、インカメラで自分の姿をチェックする。

― メイクも、女優風ワンカールヘアも決まってる。やっぱり美容院に寄ってきて良かった。

笹崎は、学生の父親とはいえ、見た目も年齢も若い。

― なんか私、本格的に意識しちゃってるな…。

電車が四谷三丁目に着くと、未来はコートの前をギュッと閉めて歩き出した。


待ち合わせの鮨店に着くと、笹崎はまだ来ていなかった。

お弟子さんらしき店員さんは、未来が何者かをすでに知っているようで、眉毛をハの字にしながら話しかけてくる。

「今、笹崎さんから電話が入って、今日来られないそうです」

大将は、「好きなだけお鮨食べて行ってね、っておっしゃってましたが、どうなさいます?」と言う。

「ええっ!?どうして…」

悠斗との消化不良なデートの後、ドタキャンされるなんて、泣きっ面に蜂だ。しかも、自分より先にお店に連絡されるなんて、悲しすぎる。

― どうしよう。帰ろうかな。でも…。

今日、少しでも綺麗でいようと頑張った自分が虚しい。

しばらく考えて、未来は決心した。

「もしよければ、私だけお鮨、いただいても良いですか?」

「もちろんです!」

出されたお造りを一口食べると、未来は思わず「おいしい!」と声を上げた。

「今日、来てよかったです」

未来は努めて明るく大将に言うと、おすすめだという日本酒を一口飲んで、感動のため息を漏らす。

― むしろ1人でよかった。うん、きっとそう。『1人でカウンターのお鮨を食べる』っていうウィッシュリストも達成できちゃうんだもの!

未来は、半分やけくそになって、次々と目の前に置かれる芸術品のような握りに舌鼓を打った。


「ああ、お腹いっぱい。本当に美味しかったです」

未来は、最後の玉子焼きを食べ終えると大将にお礼を言った。

どうやら次の客を入れる時間がやってきたようで、未来はそのまま店を後にする。

北風に身震いしながら、ミステリアスな雰囲気の荒木町をぶらぶらと歩き出すと、背後から声がした。

「未来ちゃん!」

「笹崎さん!」

― なんで来なかったの?どうして連絡くれなかったの?

聞きたいことは山ほどあるのに、言葉が出ず、笹崎に駆け寄ることしかできない。

「今日は本当にごめん。必ず埋め合わせするから。お詫びにこれ」

ルイ・ヴィトンのショッパーを押し付けられて、受け取ってしまう。星屑を散りばめたようなデザインの包みを開けると、香水の瓶が出てきた。

「何これ…『Spell on You』…あなたに魔法をかけるっていう意味の香水?」

未来がボトルの文字を読むと、笹崎がおずおずと言った。

「気に入らなかった?」

あまりにベタな名前の香水を選ぶ笹崎の姿を想像して、未来は思わず笑ってしまう。

「嬉しいけど…。香水よりも私は笹崎さんと一緒にいたかった」

未来の本音に、笹崎は安心したように微笑んだ。

「ごめんね、未来ちゃん」

― 本当は怒りたかったけど…もういいや。

未来が頷くと、笹崎は未来の手を取り歩き出した。


【未来のWISH LIST〈2年後の結婚までにしたい10のこと〉】
☑ビールのおいしさを知る
☑一人でカウンターのお鮨を食べる
☑ビジネスクラスの飛行機に乗る(欧米路線)
□一人暮らしをする
☑英会話教室に通う
☑ハワイのハレクラニに泊まる
□100万円単位の衝動買いをする
□海外から優秀な人材を採用する
□プロジェクトリーダーになる
□昇進する


▶前回:デートで80万円使う43歳・経営者の男。タクシーで連れて行かれた場所に25歳女が驚愕したワケ

▶1話目はこちら:コロナに新卒時代を阻まれた「不遇の世代」、学女卒25歳は…

▶Next:7月15日 月曜更新予定
夜の荒木町に消える未来と笹崎。2人の行く末は?

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この記事へのコメント

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No Name
一人でカウンターの鮨屋に行く とリストに書いたのなら、お店のチョイスから始めて自分で予約して何ヶ月か待ってようやくその日が来て念願のお鮨デビューと言えるんじゃないのかなぁ。全部やってもらってタイミングよくひとりになっただけで支払いも勿論自分でしてないのに、「リストも達成出来ちゃった」って...そんな甘ちゃんな所が読者の心をつかまないどころか勘違い女と不快に思われてしまうんだと思う。 他力本願や棚ぼた的にたまたま叶った事ばっかり。必死で血の滲む努力の末に成し遂げた話とは正反対。3歳児の成長日記かよ。
2024/07/08 05:4857返信1件
No Name
お刺身はお箸で食べてよって姉の助言😂 いやいやお刺身まで手で食おうとする奴なんていないわ。姉にちらっと聞いただけで「準備バッチリ」とかいう未来も終わってる。絶対、出禁レベルでマナー違反連発してただろうに。
2024/07/08 05:2445返信7件
No Name
ボストンで「私なりに頑張った」と言うのは具体的に??? また来年も来たいから現地スタッフつかまえてヒアリングした位で....自己評価が高過ぎて笑っちゃうよ。 悠斗はもはや未来の事どうでもいいと思ってるね。誕生日にアウトレットのミニ財布とかいつもゴハン行く店とか。おじさんと鮨行くのに「すげぇ」の反応。 笹崎さん是非散々未来の金銭感覚狂わせて完全に調子に乗ったパパ活女に仕上げて、会社に全てバラし掌返したようにフッてやって欲しい。
2024/07/08 05:3636返信1件
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