2024.06.01
アオハルなんて甘すぎる Vol.18― 青春の…亡霊。
“青春の亡霊”という言葉の強さに呆気にとられしまい、私は、店長さんが光江さんの口調をまねして言ったのだと気がつくまで少し時間がかった。相変わらず店長のモノマネって光江さんに似てると笑いながら愛さんが続けた。
「店名の裏テーマに青春の亡霊とかが出てくるところが物騒で光江さんらしいけどさ。宝ちゃん、聞いたことない?人は青春時代に手に入らなかったものとか失ったものに、大人になってからも固執してしまいがちって話」
「そういえば、なんとなく…」
SNSとかで見たことがある気がする。私がそう答えると、愛さんが光江さんが言う“青春の亡霊”というのは、それと同じようなことなんだけどさ、と言った。
「光江さん曰く。適度な飢えや欲っていうのは大切。適度なら飢えや欲は正しい原動力になり、人を正しく成長させるって。でもその飢えや欲が過剰になってあらぬ方向へ行くとまずいっていうわけ。
で、その“あらぬ方向”へ進みがちなのが、青春をこじらせちゃった人たちに多いっていうのよ。
例えば、青春時代の…過去の栄光にしがみつく人。あとは青春時代に失ったものを今も追い求めたり、その頃に裏切られた傷を今も引きずっていたり。光江さんはね、この街は、そんな風に青春時代を過去にできていない人達が多い街だっていうの。
自分の中の子どもがずっと泣き続けているというか…その頃満たされなかった承認欲求を、今、金や権力の力で満たそうとしている。
でも光江さんはね、今、金や権力で承認欲求を満たすことを否定はしないけど、それで過去を変えられるわけではないことを理解するべきだと。だから青春の亡霊は成仏させるしかない。キレイに成仏させて、その頃より楽しい大人の青春で上書きしてしまえって。
で。この店で、どんどん大人の青春を作って頂戴!っていうのが、店名の裏テーマらしいの。でも、そんなややこしくて説教じみたこと言われてもって思うじゃん?私も最初はそう思ったんだけどさ…」
光江さんって怖いのよ、と愛さんは、その時の怖さを思い出したかのように体を震わせ自分を抱きしめた。
「光江さんと初めて会った時、私のお金への異常な執着を言い当てられたの。今まで誰にもバレたことなかったし、うまく隠してたつもりだったから焦っちゃって。そんなことないですよって冷静なフリで否定したけど、内心、心臓はバクバク」
「…お金への執着…?愛さんがですか?」
私が知る愛さんはむしろ気前がよくて、金銭への執着など全くない人に見えるのに。
「そう。実は私って、めちゃくちゃ貧乏な家で育ってさ。高校生まで同級生を妬んでばかりだったもん。父親がダメオヤジだったから本当にお金がなくて、家のために働かなきゃいけなかったし大学もあきらめた。自由に遊ぶお金なんて全くなかったしね」
「…」
「お金があればいくらでも幸せになれると思っていたから…宝ちゃんと出会うまでにいろいろあって。結婚相手も正直お金に目がくらんだようなものだからね。それで失敗しちゃったってわけだけど。愚かだったよね、ほんと」
愛さんは笑っていたけれど、タケルくんと距離を置くと決意したばかりのその心中を思うと…私は言葉を探せず、相槌さえも打てなかった。
「で、雄大は?雄大は光江さんに何ていわれたんだっけ?雄大の青春の亡霊ってやつ」
雄大さんは何も答えなかった。愛さんは、何回聞いても絶対教えてくれないんだよねぇと笑って、じゃあ宝ちゃんに聞いちゃおう、と言った。
「宝ちゃんはある?」
「何がですか?」
「宝ちゃんの青春の亡霊。アオハルの頃の…ずっと忘れられない何かってある?」
で、伊東さんと ♥️♥️♥️ いいじゃない! 約束って何だろう? 早く続きを読みたい。
アムールの伊東さん、日本人男性にはない押しの強さで普通の?女子なら陥落しそうだけど、やはり大輝が絡んでくる展開になりますよね
現実感ないストーリーだけど、心地よく読めるのはライターさんのレベルの高さですね
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