流行るお店の理由 Vol.11

街を欲情させるアンビバレント。

東京のレストランには、この街こその仕掛けがあっていい。
相反するもの達を並べたら、ほら、気の利いた舞台になる。

イザカヤ トウキョウジュウガツ

居酒屋 東京十月

文化的イベントが多数開催される、東京の十月。異文化が出逢う時の火花を、この店に求めて。

親 和と反発。どちらに恋は生まれやすいだろうか。穏和と激情、どちらに惹かれるかで、軍配の上げ方は変わる。むしろ確率論より踏み絵かもしれない。新と旧、和と洋、柔と剛。対比され、時に対立するふたつが併存する。

『居酒屋 東京十月』はそんな場だ。

暖簾をくぐれば、店中に欅。節のない柱、釘に頼らない純日本建築。30数年、しゃぶしゃぶ店として時を刻んだ場所に、壁の朱色が新しい命を与えた。音楽はない。中央に鎮座する漆黒のアートテーブルが湛える水の、その音だけが響く。長く「水」を素材としてきた彫刻家アンテ・ヴォジュノヴィックならではのアプローチだ。加わるのは人々の会話だけ。密やかに、時々ざわめいて店を彩る。

素朴で力強く、意外性を含んだアルゼンチンの郷土料理と、和みを誘う日本の家庭料理に合わせるのは、まだ日本ではなじみの薄いアルゼンチンワイン。南米最高峰・アコンカグア山を抱くメンドーサ州産を中心に揃える。高地栽培のぶどう故、防虫用農薬をほぼ必要としない。重いが、後味は爽やかな余韻しか残らない。ワインもまた、鮮やかな対比を含む。

店を切り盛りするのは、埜田美和さん。着物に割烹着、肩書きは女将。だが料理を盛る皿はアスティエ・ド・ヴィラット。アルゼンチン料理は彼の地のシェフから手ほどきを受けた、本場ものだ。ここは人までも、またMEZCLA(=混合)。

ここにお客が携えていくべきはただ、自身の新しい物語を紡ぐ勇気だけ。ただそれだけ。

左.鶏手羽元の梅煮¥1,500。さっぱりした和の代表的味わい

右.ロクロ¥1,200。すり下ろしたとうもろこしやじゃがいも、かぼちゃ、骨ごと砕いた豚スペアリブ、チョリソーなどを煮込んだ、アルゼンチンの郷土料理。ほのかにスパイシーだが、柔らかな味だ

左.季節の焼き野菜¥1,800。2~3人でシェアすべきボリューム

右.個室にはしゃぶしゃぶ店時代に使われていた自在鉤とテーブル、襖などがそのまま残された。ロウソクの淡い光と共に

左.開店に合わせて新たに祀られた大黒さま

右.彫刻家アンテ・ヴォジュノヴィックによるアートテーブル。店はアパレル企業「アッシュ・ぺー・フランス」がプロデュース。ファッション系ならではの多彩なアイデアと人脈、アイテムが、混沌ではないアンビバレントを生んだ

左.メインの照明はフィラメントを使った電球。肌を美しく見せる

右.テーブルウェアはアスティエ・ド・ヴィラット


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