
就職倍率は300倍以上、早慶卒が大多数。エリートが集まるはずのキー局が、凋落の一途を辿っているワケ
世のハイスペックな男女は、一流企業に勤めてバリバリ稼ぐ。何も苦労もせずに働き、華やかな印象だ。
だが、そんな一流企業を辞める人も多く存在する。では、なぜ彼らは退職という道を選んだのだろうか?
そこにはその業界、その企業に勤めた人にしかわからない、光と闇が広がっていた。
Vol.4で取り上げるのは、テレビ局だ。
かつては就職人気企業のランキング上位の常連だったが…。現在はどうなのだろうか。
取材・文/風間文子
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「5大商社勤務という優越感で満足できる人なら、理想の会社」たった2年で退職を決めた、若者の本音
▼INDEX
1. テレビの世界で、自分のドラマを作りたい
2. 社員の才能を評価する、人事術に感動するも…
3. 局内では“死んだ目”をした人が大量発生?
4. 数字に固執する上層部、一方の現場は
テレビの世界で、自分のドラマを作りたい
【今回の取材対象者】
名前:桜木優斗さん(仮名・30代)
職歴:キー局(1年)⇒フリーランス
当時の年収:500万円
最終学歴:慶應義塾大学 法学部政治学科
「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」
劇場版『踊る大捜査線』(THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!)で、俳優・織田裕二演じる青島俊作が幹部らにそう吠えたのは90年代後半のことだ。
そして時代は令和となり、同映画は過去のものとなった。…はずが、取材に協力してくれた男性からテレビ局の実態を聞く限り、冒頭のセリフと同じ思いを抱く若者は少なくないようだ。
昨今話題となっているドラマ化における原作問題も、男性が指摘する“テレビ局の闇”に端を発しているように思えてならない。
晴れ渡る4月の始め。都内の観光名所にもなっている社屋で行われた入社式に、桜木優斗さんの姿はあった。
就職先は5大キー局(日本テレビ放送網、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビジョン)のうちの1社だ。
彼が在学していた大学には、キー局に就職していく先輩も多くいた。
「そんな先輩たちから、テレビの世界には才能ある人たちが山のようにいるだとか、あの芸能人はこうだとかいった話題を聞かされて、キラキラして見えた」(優斗さん)
一方、優斗さんは学生時代に多くのテレビドラマを見て、いつしか自分でドラマを作ってみたいと思うようになる。
入社先の倍率はエントリーシート時点で約800倍といわれ、入社試験の面接では毎回難解なテーマを出されるも、見事内定を勝ち取った。
もちろん、希望はテレビドラマの制作だった。ディレクターを経てプロデューサーとなり、自分でも脚本を書いてみたい。想いは尽きなかった。
しかし、優斗さんは数年前にテレビ局を去っている。
「決して悪いことばかりだったわけじゃないんです。だけど…」
彼が垣間見たテレビ局の闇とは、いかなるものだったのだろうか。
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