春の風に吹かれて Vol.6

「このままじゃ、ヤバい」銀行に入社して7年。惰性で働く30歳女が決意したコト

東京の女性は、忙しい。

仕事、恋愛、家庭、子育て、友人関係…。

2023年を走り抜けたばかりなのに、また走り出す。

そんな「お疲れさま」な彼女たちにも、春が来る。

温かくポジティブな風に背中を押されて、彼女たちはようやく頬をゆるめるのだ――。

▶前回:「親の期待に応えるのはやめた」大企業でのキャリアを捨て、慶應卒28歳女が飛び込んだ世界は…


沙莉(30) 臆病な自分が嫌いで…


「この案件、大庭さんに任せるね」

「…は、はい」

2つ上の先輩・村上に資料を渡され、沙莉は曖昧にうなずいた。

沙莉は、神奈川県の大手地方銀行の東京支店で、貸付業務を担当している。

人生に関わるような大切な相談も多い。やりがいを感じる日々だが、その分プレッシャーもある。

― また重要そうな案件だ…。

村上が手渡してきた書類には、難易度の高い依頼が書かれていた。

融資の額が大きく、スムーズには通らなそうな案件だ。

「こ…これなら、村上さんがやってくださったほうが、確実かなと思うんですが」

沙莉は恐る恐る、問いかける。すると彼は困った顔でゆっくり首を横に振った。

「大庭さんならできるって。そんなに臆病にならないで、やってみてよ」

責められたような気分になり、沙莉はとっさに「すみません、そうですよね」と謝る。

臆病――その言葉は、自分のためにあるのではないかと沙莉は思う。

何かをしようとするとき、決まっていつも失敗する気がするのだ。

― きっと、受験も就活も、希望どおりに進んだためしがない過去のせい。

沙莉は自分でそう分析している。

― 情けないなあ、私。

ランチタイムがきて、落ち込んだ気持ちで一人、近くのカフェチェーンに入った。

注文するのは、いつもパスタにコーヒー。

支店に、気を許せる同僚はいないから、ランチはいつも一人だ。

レストランや食堂に単独で入る勇気はない。かといって、デスクで孤独にご飯を食べるのも寂しい。だから毎回、カフェでランチタイムを過ごす。

「あれ?沙莉ちゃん?」

席につき、パスタの到着を待ちながらコーヒーに口をつけた瞬間、沙莉の顔を覗き込む人がいた。

この記事へのコメント

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No Name
この連載も「このままじゃヤバい」
2024/03/13 05:1528返信2件
No Name
受験も就活も希望通り進んだ試しがない過去.....
世の中にそんな人たちばかりだよ。不本意でも置かれた場所で咲けるよう頑張って自分もマインドも変わっていくんじゃないのかなぁ。惰性で働いて何でも後ろ向きに捉えて一緒にランチ行く同僚もいない... そんな30歳が地方創成かぇ。
2024/03/13 05:3526返信4件
No Name
臆病の代表格のみたいな子が難度の高い融資案件をまとめられるだろうか…
相変わらずのリアリティのなさ。
2024/03/13 07:1211返信1件
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