誰もが見惚れる美しいルックスで、性格も良い。学歴だってバッチリだし、その上、超Richな家系の生まれ。
彼の名は、友坂大輝(24)。
当然、とんでもなくモテるし望めば全てが叶い、キラキラ人生を謳歌できるはずなのに…彼は。
恋すれば盲目。極度の恋愛体質で。許されぬ想いに身を焦がしてしまう、いつもどこか残念な男。
そんな彼のことを、友人たちはこう呼びます。尽くしても、尽くしても、『報われない男』…と。
人気連載「アオハルなんて甘すぎる」のサイド・ストーリーがスタート!
◆
「オレ、人妻さんにしか、タタナイの。だからごめんね」
「え?」
「あ、タタナイ、じゃ意味わかんない?つまり、セックスができな…」
「いや、あの、わかります!わかりました!でも…」
ユキ、と名乗った女の子は真っ赤になって、友坂大輝から目をそらし、うつむいた。前も後ろもぱっくりと開いたキラキラのワンピース。強いメイクで、くるん、と上げられた長いまつ毛が震えている。
派手に武装された容姿と恥じらいのギャップ。かわいいなぁ、と大輝は思う。我ながら毎度毎度、不思議なのだ。一生懸命告白してくれる女の子たちをいつも、かわいいなぁ、とは思うのに。
告白されてその気になるという経験が、大輝には、24年間の人生で一度もなかった。
初めて告白というものをした15歳の時から、恋人になるのはいつも、大輝から愛を告げた人だった。
「私、ずっと大輝さんのことが好きで…その、1回だけ飲みに行くとか…できませんか?」
必死に自分を見上げてくる、女の子のうるんだ瞳の必死さに、憐憫と罪悪感、そして…共感を覚えて、胸がざわつく。
― オレも、キョウコさんからはこう見えてるのかな。
自虐的になった思考を振り払い、大輝はわざと大きな溜め息をついた。
「ずっと好きって、何を?オレのルックスしか知らないでしょ?あとしつこい子はホント苦手。だから…ごめんね?」
大輝の、目に力を込めたごめんね、に、女の子はぐっと唇を噛みしめ、無言で去った。その後ろ姿が、爆音に揺れる人の群れに消えるのを見送って、仕事に戻る。渋谷にあるクラブのバーカウンター。ここで酒を作って出すのが大輝の仕事だった。
「うわぁ、かわいそう…今の子、ガチ恋っぽかったのにぃ。相変わらずヒドイ男ぉ」
ふざけた口調で冷やかしてきたのは、隣で洗い物をしながら、たぶんしっかり聞き耳をたてていた、バイト仲間の勇太だった。
「今の子で今日5人目?大ちゃんが今日でこの店ラストって知って、みんな焦ってんね」
「数えるな。だいたい、ラストの情報ばらまいたのお前だろ」
「だってオレ、女の子に聞かれたら何でも教えてあげたくなっちゃうもーん」
隣で空いたグラスを拭きながら笑う勇太の、調子のよさと軽さに、大輝は苦笑いする。
大学まで強豪柔道部の有名選手だった勇太は、縦にも横にも大きいマッチョ体形で(180cm、100kg超)一見いかつく怖いのだが、いつもニコニコ、女の子にはデレデレで、常連客にはゆるキャラ扱いされている。だが暴れる客には容赦なく形相が変わり、鮮やかに店から追い出す警備員としても大活躍している。
「でも大ちゃんさあ、毎度“人妻にしかタタナイ”って言うのやめなよ。そのおキレイなお顔に似合う、もう少し上品な断りかたがあると思いますよ、ボクは」
「下品な方がいいんだよ」
「下品のレパートリーが下手すぎんの。もっと他にあるでしょうが…これだからお坊ちゃんは…」
「それに嘘は言ってない」
報われない男
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誰もが見惚れる美しいルックスで、性格も良い。学歴だってバッチリだし、その上、超Richな家系の生まれ。
彼の名は、友坂大輝(24)。
当然、とんでもなくモテるし望めば全てが叶い、キラキラ人生を謳歌できるはずなのに…彼は。
恋すれば盲目。極度の恋愛体質で。許されぬ想いに身を焦がしてしまう、いつもどこか残念な男。
そんな彼のことを、友人たちはこう呼びます。尽くしても、尽くしても、『報われない男』…と。
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