2023.11.18
東京ご近所探訪 Vol.32東京はエリアが変われば、街の色が変わる。それぞれの街が特徴的なのは、住人の個性によって変化するからだ。
東カレが、街に住まう人々やレストランを徹底取材して、その個性をご紹介しよう。
今回は、「広尾」という街のスペックや成り立ち、そして広尾のいまを体現するレストランに注目!
東京の街の個性を徹底調査する連載「東京ご近所探訪」。過去にご紹介した街も、要チェック!
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今月のエリア【広尾】
日比谷線の広尾駅を中心とした歴史ある高級住宅街「広尾」は、都会のエアポケットのようなエリアだ。
住所で言えば、渋谷区広尾2〜5丁目、恵比寿2丁目、港区南麻布3〜5丁目、白金5丁目あたりだが、大きな複合商業施設も大規模なタワーマンションもなく、どこか奥ゆかしく、それゆえ一見つかみどころがないようにも思える。
江戸から続くお屋敷街の“何もない”心地良さ
今回、多くの方に「広尾はどんな街ですか?」と訊ねたが、皆一様に「何もない街、ですかねぇ」と言うのである。
ある住民は「恵比寿と六本木という繁華街に挟まれているけれど、広尾は落ち着いた住宅街。わざわざ来る理由がない」と笑い、「そこが魅力でもあるんですけど」と付け加えた。
広尾の街を見渡せば、高級スーパー『ナショナル麻布』と『明治屋ストアー』があり、駅の西側には昔ながらの庶民的な商店街「広尾散歩通り」が延びている。
緑豊かな公園があり、聖心女子学院、東京女学館、広尾学園、慶應義塾幼稚舎など名門の学校やインターナショナルスクールも多い。
寺院や教育機関、医療機関を地主とした土地が多いのも、大規模な開発が及ばない理由だろう。
広尾にあるのは華やかな非日常ではなく、穏やかで上質な日常だ。
江戸時代に立ち並んでいた武家屋敷が、皇族や華族の屋敷、諸外国の大使館や領事館となり、国際色豊かな街の基盤を作った。
創業から24年、広尾・恵比寿・白金の不動産を扱ってきた『ジェイ・ネットワーク』の石井準一代表によれば「広尾界隈にはフランスやドイツ、スイス、ノルウェーなど30ほどの大使館や領事館があって、昔から、外国人が好む広くてゆったりとした物件が多いんです。六本木ヒルズのオフィスに通う方が、喧騒を避けて広尾に住まいを求めるケースも少なくありません」。
海外で暮らした経験を持つ日本人が多いのも広尾の特徴だという。
実力派レストランが産声を上げる土壌がある
広尾を語るのに、“食”は重要なファクター。特にレストランシーンを見れば、その名を轟かす有名店がいくつも存在してきた。
1982年に創業し、1988年から広尾に移転した『レストランひらまつ』はフランス料理を根付かせた存在であり、いまなお風格ある佇まいを見せる。
イタリアンの歴史を見ても、重要店がズラリ。レジェンド的存在としても知られる『LA BISBOCCIA』、原田慎次シェフの『アロマフレスカ』(現在は銀座に移転)、日髙良実シェフの『アクアパッツァ』(現在は青山に移転)などが筆頭。
その流れは、いまにも続き、『ボッテガ』『メログラーノ』など都内有数の人気イタリアンが点在する。
それ以外のジャンルでも、『長谷川 稔』や少し離れるが『茶禅華』などの弩級店が誕生。ここ最近は、鮨店も話題で、『すし 良月』はその成功例。今年オープンの『鮨 うらの』も食通の間では噂になっている。
実は広尾は近隣の恵比寿、六本木などと比べても家賃相場が安く、若手にはうってつけ。商店街には「EAT PLAY WORKS」や立ち飲み店もでき、多様化も進んでいるのだ。
「EAT PLAY WORKS」
広尾駅から徒歩1分。「広尾散歩通り」の入口に2020年に誕生した複合施設。
1、2階のレストランフロアは、店舗と店舗の間に仕切りのないシームレスな構造になっており、さながら大人のためのフードコートの様相。
3~6階はメンバー制のラウンジとオフィスで、下階のレストランのフードをオーダーすることもできる。
『酒亭二ぶん半 広尾離れ』
立ち呑みの概念を変えた日比谷の『三ぶん』、門前仲町『二ぶん半』の姉妹店として2023年7月にオープン。
旬の魚介、「自家製からすみ餅の磯辺焼き」(880円)などの逸品と、各地の日本酒(100cc)660円~。
『鯛茶TOKYO』
小鉢と漬物、甘味がついた「鯛茶漬け御前」1,650円。
濃厚なゴマだれにからめた鯛は刺身として食べても、お茶漬けにしても美味。
ワイン(750円~)とのペアリングも楽しめる。
◆
『LA BISBOCCIA』の井上裕基シェフは広尾の客層について「イタリアはもちろん、大使館が近いフランスやドイツなど各国のお客様も多いですね。地元の常連さんは、流行やブランドではなく本質に価値を求めていると感じます」と語る。
近隣には、経済的に成功を収めたアッパー層のほか、旧華族や財閥系など錚々たる家柄のお宅も多く、ケタ違いの富裕層が日常を過ごしている。
そんな街を証明するように、彼らが好むワインショップの多さも必然。2022年だけでも4軒がオープンしている。
『ルグラン・フィーユ・エ・フィス東京』
1880年創業、パリの老舗ワインショップの海外旗艦店。
「外国のお客様も多く、ロワールやローヌ、プロヴァンスといった良質だけど知られていない銘柄が動きます」と代表の前川大輔さん。
地下にはヴィンテージ専用のセラーもあり、広尾のニーズに網羅的に応える。
◆
最後に、長年、広尾を見てきた『レストランひらまつ広尾』の後藤隆浩支配人に“広尾のこれから”を伺った。
「街の成り立ちから見ても、今後も街並みが大きく変わることはないでしょう。この不変性こそ、広尾の良さだと思います」
日本の文化も外国の文化も、日常に溶け込みながらしっかりと根付いている街、広尾。
住人たちの時代に迎合しない価値観が、広尾を広尾たらしめている。
ライター・坂井が街の気になる店を現地リポート!
~地元の富裕層たちが集う夜の“溜まり場”に突撃!~
「広尾にセンベロ立ち飲みがあるの知ってる?」。取材中、そんな話を聞いて耳を疑った。
え、ここ広尾ですよ。都内屈指の高級住宅街ですよ。きっと洒落たワインバーかなんかでしょ。
そんな疑念を抱いたまま噂の店『チャオズ広尾』へ。
ネオンサインが光る外観は、下北沢や三軒茶屋にありそうな“ネオ居酒屋”の雰囲気。
壁のメニューに目をやれば、“レサワ”、“ウーハイ”、金宮のシャリキンまで!
サワーは500〜600円で、中華系のおつまみは200〜300円のものもあり価格帯までカジュアルだ。
モツをじっくりと煮込んだコク深い「煮込み白」(990円)はハーフサイズ(590円)も。
辛みと旨みがあとを引く「麻婆豆腐」850円。
ところが、「若いお客さんは少ないですね。常連客のほとんどは30〜50代のご近所さん」と店長の石井さん。
確かに、店内に集うグループは、短パン・サンダル姿の男性や、クリップで髪を留めたワンマイルウェア姿の女性など、40代と思しき大人たち。
BGMの昭和の懐メロを口ずさみながら“レサワ”を飲む。これまで広尾になかった砕けた空間が、近隣に住む富裕層たちの溜まり場と化していた。
■店舗概要
店名:チャオズ広尾
住所:渋谷区広尾5-1-23
TEL:03-6456-2590
営業時間:【月~金】16:00~25:00
【土・日・祝】14:00~25:00
定休日:不定休
席数:スタンド25名
広尾は取材や食事で、たま~に訪れる程度。公園が近いからか、高級そうな犬連れマダム率の高さに驚き!
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