男同士の友情から生まれた、北アフリカ産のシラー
嵩倉:おふたりの話を聞いていたら、私もすごく興味が湧いてきました。そうすると、今回はやっぱりインドワイン?
柳:最初は僕もそうしようかと思ったのね。日本に輸入されているインドワインというと、「スーラ」が有名で、シュナン・ブランから造られる白ワインもいいし、シラーの赤ワインもなかなか美味しい。
それから、無名ワインに脚光を当てる腕利きの醸造コンサルタント、ミシェル・ロランがかかわっている「グローヴァー・ザンパ・ヴィンヤーズ」のワインも、以前、近所のインド料理店で飲んだらかなり美味しかった。
でも、この映画を鑑賞するワインとしては、いまひとつ役不足な気がしたんだよね。
嵩倉:ほぉ。それで柳さん。ワインは決まりました?
柳:うん、やはりここは友情をテーマにしてみようと思う。
男同士の友情から生まれたワインは少なくないけど、フランス、イタリア、カリフォルニアといった著名産地じゃつまらないから、今回はモロッコワインの「タンデム」だ。
「Tandem Syrah du Maroc 2019(タンデム シラー・デュ・マロック2019)」
アラン・グライヨとジャック・プーラン、ふたりの醸造家のコラボプロジェクトが始まったのは2005年で、6ヶ月間かけて理想的なシラーのブドウ畑を発掘。
40%はステンレスタンク熟成。60%はフレンチオークの樽で熟成。
スミレやプラムのアロマを持ち、口当たりは柔らかく、テクスチャーも滑らかだが、骨太さも十分。アフターフレーバーにスパイシーなニュアンスが残る。
4,400円/ヴィノラム TEL:03-6228-1414
◆
新谷:モロッコ?あの北アフリカの?
柳:インド同様、エスニックな感じがしていいでしょ?
昨年惜しくも亡くなったけど、フランスのローヌ地方にアラン・グライヨという名醸造家がおりました。彼と自転車を通じて親交があったのが、ボルドー出身の醸造家、ジャック・プーラン。
彼はモロッコのワイナリーで仕事をしていて、アラン・グライヨとのコラボワインを2006年ヴィンテージから醸造。タンデムとは前後ふたり乗りという意味で、ラベルにもふたり乗りの自転車が描かれてます。
嵩倉:品種はシラーなんですね?
柳:うん、アラン・グライヨがお得意の品種で、飲んでみると北アフリカの野暮ったさがなく洗練された味わいで驚いた。スパイシーなトーンもあり、正統派インドカレーとも合いそうだよ。
嵩倉:では嵩倉、このシラーを片手に早速『RRR』を鑑賞します。
柳:ちょっと待った。その前に僕とナートゥの特訓だ!
嵩倉:ひぃ〜(涙)。
マリアージュをお届けするのはこの3人!
幅広い分野の雑誌で執筆を手掛け、切れ味あるコメントに定評があるワインジャーナリスト。未訪のインドへ行ってみたいと思いながらも、今月もまたヨーロッパへ出張の嵐……。
映画を中心に書いたり取材したり喋ったり。チャールストンダンスを習った時にダンスセンス皆無だと判明。この映画のダンスも真似てみたけど挫折。応援専門でいきます。
本連載の担当になって6年目に。ワインの知識は少しずつでも積みあがっていると信じ、柳氏にしがみつく日々。本作鑑賞後は、お気に入りのカレー店『トーキョー バワン』へ走りました。
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