2023.07.18
感度高き大人にとって、美食を楽しむならワインは欠かせないエッセンスだ。
ワインとは、知れば知るほど密度が深い夜が過ごせるというもの。この記事が、その一助になれば。
「Chapter.1 ワインを深める」で、学びを。「Chapter.2 ワインを楽しむ」では、喜びを。
デートはもちろん、ワイン好きの仲間とも訪れたい、注目の7軒を厳選!
【華やかでリッチな港区の公式ドリンク「Champagne」】
シャンパーニュ地方で造られるスパークリングワインの最高峰。独自のテロワールと瓶内二次発酵による泡が特徴の勝利の美酒。
乾杯の一杯というイメージが強いが、その先には一層奥深い世界が待っている。
いつまでもグラスに立ち昇る、シャンパンの泡は幸せを運ぶシンボルとしても知られている。
こちらは「J.M セレック ソレサンス エクストラ・ブリュット NV」16,000円。
香りにも味わいにも複雑性と余韻があり、ゴージャスさが際立つシャンパン。
「特徴的なテロワールもありますが、造るための工程が多いので、同じカテゴリーでも生産者によって味わいが全く異なるのが面白いところです」と、その魅力について話すのは『ポンポンヌ』店主の増竹ゆかりさん。
2010年に開店する以前からシャンパン教室を主宰し、その魅力を伝え続けてきた。
ラインナップは、ほぼシャンパンのみで、グラス3種類とボトル80種類。グラスのうち1種類は通年KRUGを開けるというから驚きだ。
「シャンパンは3種類のブドウがブレンドされているものが多いですが、白ブドウだけのブラン・ド・ブランや、黒ブドウだけのブラン・ド・ノワールを用意して、違いを楽しめるようにしています」
ボトルは自家栽培のブドウで醸造するRM(レコルタン・マニュピュラン)と呼ばれる小規模生産者のものが中心。
グラスで試してから、ボトルで注文するのがオススメ。
「シャンパンは1本をゆっくり味わうことで、銘柄の個性や真の美味しさを満喫できます」と、同店では温度変化を楽しめるよう、ボトルクーラーは使用しない。
温度が上がり、空気に触れ、まろやかになる経過を楽しむためだ。そこで、ボトルの後半はボウルが大きめのグラスを用意することもあるという。
「時間をかければ、調和の素晴らしさやスケール感を少しずつ感じることができます」と店主。
シャンパンの魅力を深く知るなら、こんな一軒に身を委ねたい。
■店舗概要
店名:ポンポンヌ
住所:港区南麻布5-16-4 村松ビル 2F
TEL:03-5793-5088
営業時間:19:00~(L.O.25:00)
定休日:月曜、日曜、祝日(月曜はシャンパン教室開催)
席数:カウンター7席、テーブル12席
【ワイン好きが行き着く最終の地「Bourgogne」】
ボルドーと双璧をなすフランスの2大銘醸地。
シャルドネとピノ・ノワールを中心に単一品種からエレガントなワインが造られている。
豊富な品数と、幅広い味わいは一度知ってしまうと抜け出せない。
ブルゴーニュグラスに深紅の液体が注がれる美しい瞬間。
こちらのワインは、この日グラスで提供されていた「コンフュロン・コトティド ニュイ・サン・ジョルジュ 2013」1,870円。
オーナーソムリエの松田 慧さんは「ブルゴーニュしか飲まない」と公言するほどブルゴーニュ愛が深い。
それは経歴を見ても納得で、シェフともに『ル・ブルギニオン』出身というから、生粋だ。
「ブルゴーニュは生産者自体の数が多く、それぞれで味が微妙に違うので、完璧にすべてを理解するのが難しい。その奥深さに惹かれます」
実際、ブルゴーニュの区画はワイン法で細かく分けられているので、20〜30銘柄のワインを造っている生産者もいる。
白ワインはシャルドネ、赤ワインはピノ・ノワールを中心に単一品種からワインが造られているのも特徴。
赤ワインは繊細で優美、白ワインは芳醇でふくよかな味わいがあり、いずれも酸味とミネラル感があってしっかりとした骨格と緊張感がある。
選ぶのが難しいとされるブルゴーニュワインだが、同店ではグラスで赤白それぞれ3種類を厳選。
「まずは本来の味わいを楽しんでみてください。なかなかグラスで出されることのない有名な村のワインやプルミエ・クリュのワインもあります」
また、飲み頃となるワインが厳選されているのも同店ならでは。
「ブルゴーニュワインが真価を発揮するのはある程度の熟成を経てから。80年代や90年代のボトルワインをたくさん用意しています」
その味わいには複雑性があるので、料理の素材の味をトリガーにすると、ワインの要素をより多く感じ取ることができるという。
最高級の鳩が持つ血の風味が、赤ワインの鉄分を引き出す
「ランド産仔鳩のロースト 醤油のソース」6,270円(2皿分。写真は1皿分)には「フェヴレ ニュイ・サン・ジョルジュ 1er クロ・ド・ラ・マレシャル 1992」(35,420円)で。
血の風味やソースにあるレバーの風味が、約30年熟成して柔らかくなった赤ワインの鉄分を誘い出す。ワインの複雑さが料理で引き立つ。
鰻や帆立貝にある海の要素が、リッチな白のミネラル感を誘発
「鰻のソテーと帆立貝のムース コンソメと紅茶 紫蘇の香り」4,400円(2皿分。写真は1皿分)は「フェルナン・エ・ローラン・ピヨ シャサーニュ・モンラッシェ 1er モルジョ 1989」(59,450円)と。
蜜のような甘くリッチな白ワインの隠れたミネラル感を魚介類が引き出す。紫蘇の香りも白ワインのさわやかさとマッチ。
◆
奥深いブルゴーニュを知るための第一歩にふさわしい店だ。
■店舗概要
店名:élevé
住所:港区三田1-2-20 エルヴェ 1F
TEL:03-4361-5447
営業時間:18:00~(フード L.O.22:00、ドリンク L.O.23:30)
定休日:水曜、日曜
席数:カウンター7席、テーブル2席
【感度高きワインラバーの必修科目「Vin Nature」】
躍進目覚ましいナチュラルワイン。
かつてない軽やかな飲み口は、ジャンルレスで料理との相性を見せ、感度高き大人たちを瞬く間に魅了した。
広がり続けるこの世界は、今知っておくべき最重要課題だ。
オススメは“O2”のロゴがエチケットに描かれた濃密な「ジャンフランソワ・シェネ」の「ロードゥ・ヴィーニュ 2015」。
深みのあるオレンジの液色は酸化熟成によるもの。ワインはグラス 1,100円~、ボトル 6,600円~。
2018年のオープンから一貫して、店で供するワインは9割がナチュラルワイン。
シェフの大津光太郎さんはその理由を、「飲んでいて疲れない。そして、二度と同じ味わいに出合えない点も魅力」と語る。その言葉どおり、実はナチュラルワインに厳密な定義はない。
この店のワインセレクトを一任されているソムリエの大竹智也さんも続ける。
「極力、人的介入をせずに造ったもの、という共通認識があるくらい。気候やその年のブドウの出来具合で、同じ醸造家が手掛けても毎年同じ味わいに仕上がるわけでもないんです」
ゆえに、味わい方、楽しみ方も、ナチュラルワインは大きく異なる。
「一期一会なぶん、飲み手は心持ちを広く持って受け止める、というのがまず大切。
その上で気に入った味わいに出合ったら、同じ造り手の別銘柄を試してみたり、同じブドウの品種の違うエリアや違う年を攻めてみる。もちろん、エチケットのデザインで気に入ったものを選ぶのも全然アリです。
ナチュラルワインの魅力は、自由に楽しめること。それに尽きるかもしれません」
『O2』では、この料理にはこれ、と決め打ちのペアリングをすることはない。
中華の技法で調理はするが、心掛けているのはワインとの相性。ナチュラルな風合いを主役に楽しめるよう、痺れや辛みなど刺激的な味付けもしていない。
なので、常時10種以上開いているグラスから、まずは好みを伝えれば良し。自然派に魅了された店主とソムリエが、新しきワインの世界へと導いてくれる。
ワインと料理が高め合う高尚な出合いに、自然派の実力を見る
料理はコースのみ(7,500円、10,000円、12,500円)。
この日の前菜は、ジャスミン茶で炊いたキヌアと野菜に自家製の桜エビのXO醬を和え、ライムとキウイの酸味をアクセントに効かせたサラダ。
トスカーナの造り手、シモーネ・サンティーニ氏による「レ・カルチナイエ」の2015年が放つレモンやライムのアロマが料理をエキゾチックに引き立てる。
コース2品目のチャーシューには、シチリアの「デ・バルトリ」が手掛ける「ヴェッキオ・サンペーリ」を。
蜂蜜のような色合いとカラメルのような甘苦さは、長期間、酸化熟成をかけることで生まれたもの。
五香粉や複数のスパイスを練り込んだチャーシューとともに口に含むと、黒蜜のようなねっとりとしたコク深い味わいに変化し、驚くはずだ。
アルザスの「ガングランジェ」が造る、いわゆるオレンジワイン。
使われている品種、ゲヴュルツトラミネールは、クミンのニュアンスや熟成由来の蜜っぽいニュアンスなど、テクスチャー面でカレーとよく合う。
コース終盤の「ヤングコーンと海老のココナッツカレーグラタン」といただくと豊かな旨みが増幅し、カレーの輪郭も際立つ最高の相性だ。
■店舗概要
店名:O2
住所:江東区三好2-15-12 峯岸ビル 1F
TEL:03-6458-8988
営業時間:17:00~(L.O.22:00)
定休日:月曜、他に不定休あり
席数:カウンター6席、テーブル8席
午前10時から夜11時まで営業するお洒落なカフェ。
コーヒーで語らう雰囲気だが、客の目当ては自然派を中心とするワイン。壁の高さと同じ大きなセラーもあり、そこに常時100種以上のワインがそろう。
オーナーが国内のワイナリーに精通し、珍しい日本ワインも手に入るゆえ、オンメニュー以外のお宝も要チェック。
スタッフに相談するのもよいが、序盤は一升瓶ワイン(1杯 550円)などを気負わず楽しむのもいい。
賑わう神泉の通りからふらりと入ってくる人が多く、そのカジュアルさがワインを身近にし、ワイン通は気楽さと品ぞろえに杯がすすむ。
地鶏や鹿のローストなど料理も豊富。
夕食を兼ねてかまえずワインを知る夜もまた心地よい。
■店舗概要
店名:Cafe Bleu
住所:渋谷区円山町23-9 平井ビル 1F
TEL:03-5428-3472
営業時間:【月~金】10:00~(L.O.22:00)
【土・日】12:00~(L.O.22:00)
定休日:無休
席数:カウンター12席、テーブル16席
4メートルの高さを誇るワインセラーの圧倒的な迫力に、初めて訪れた客は驚く。
「丸の内ブリックスクエア」の中庭に面したオープンエアの“MARUGO”のセラーは、その存在自体がアイコニックだ。
格納されているのは、フランス全土のワインが約600本。ボルドーやブルゴーニュをはじめ、南仏やロワール、そしてシャンパーニュまで。
ワイン大国、フランスの“ひと通り”がそろうだけに、気の向くままに飲み尽くすのも一興だ。
料理はパテやチーズをはじめとしたビストロメニューが小皿で供されるスタイル。
明るい時間からのアペロ、ディナー後のバー使いも可能なのもありがたい。
テラス席もあるので、本場の如く、タイムレスにグラスを傾けるのも至福。
■店舗概要
店名:MARUGO MARUNOUCHI
住所:千代田区丸の内2-6-1
TEL:03-6269-9105
営業時間:【月~木・土】11:00~(L.O.22:30)
【金】11:00~(L.O.23:00)
【日】11:00~(L.O.22:00)
定休日:施設に準ずる
席数:カウンター10席、テーブル22席、テラス20席
代官山で旨い飯とナチュラルワインといえば、筆頭に挙げられる『falò』。
前菜からメイン、〆のパスタまで。樫村仁尊シェフが繰り出す豪快な炭焼き料理は、いずれも酒飲みのツボをがっちり押さえているゆえ、“皿が進む=ワインが進む”となる。
旬の野菜、魚、肉が目の前で豪快に焼き上がるのを見ながら、ワイン片手に待つのも楽しい時間。
リストには「食事に合わせやすく、いちばんカジュアル」という理由から、イタリアの銘柄がずらり。
泡を含めグラスで常時15種類、ボトルは5,000円台からそろうのも、沼落ち確定のフラグ。
「難しい話は一切なし。美味しいか、好きか。それで選んでいただければいいんです」と、カメリエーレ、猪又宥人さんの言葉に後押しされ、思うがままナチュラルワインに溺れる夜を過ごしたい。
■店舗概要
店名:falò
住所:渋谷区代官山町14-10 LUZ代官山 B1F
TEL:03-6455-0206
営業時間:【月~金】17:00~(L.O.21:30)
【土・日・祝】15:00~(L.O.21:00)
定休日:不定休
席数:カウンター26席
アペリティーボを一杯ひっかける常連、ワイン学校の生徒を連れた専門家、深夜に高級ワインを開ける紳士etc. 駅から徒歩15分という立地ながら、広尾の『bar & enoteca implicito』はイタリアワインの聖地として人を呼び続ける。
イタリアワインのコレクターである店主・松永 聡さんが集めたワインは3千本以上。
フランチャコルタだけでも50種以上がそろい、バローロやバルバレスコなど名醸地のワインも驚愕の品ぞろえだ。
ワインは99%イタリア産。
500軒のワイナリーを巡った店主が選び抜いた逸品、特に北イタリアの品ぞろえにプロも注目する。
しかもリクエストがあれば基本グラスでの提供に応え、1杯1,600円から上は1万円以上(ボトル次第)。
隠れ家的だが堅苦しくはない。イタリア的軽快さで松永さんと世間話しながら立ち飲みするのが、大人の楽しいワイン遊びだ。
■店舗概要
店名:bar & enoteca implicito
住所:渋谷区東4-6-3
TEL:03-6712-6643
営業時間:16:00~(L.O.25:00)
定休日:日曜
席数:テーブル18席(スタンディングあり)
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