
フランス料理の入口となる本格的かつ気軽なビストロの味
長いコの字を描く、ちょっと珍しいカウンターは野田雄紀シェフ自らが設計したものだ。パリの『タイユヴァン』で修業した後、神楽坂『ルグドゥノム ブション リヨネ』で3年間スーシェフを務めた人物だ。
今年7月、たったひとりで始めた同店は、ガストロノミーの技を凝縮したフレンチタパスがカウンターで気軽に楽しめる。
「フレンチは敷居が高いと考えている人への意識改革に挑戦したい」と、料理は500円前後、1000円前後、1500円前後の3プライス制。ほぼ日替わりで、全て黒板に書き出される。
「ガストロノミーの魅力を充分に知りながらも、実際、自分がフランスで通いたくなったのはカウンターの店だった」
そんな自身の経験を活かした店のカウンターは、アンティークや中古家具など、ひとつひとつの椅子をシェフが吟味して集めた。さながらカフェのように気軽な雰囲気の店内だが、提供される料理は本物の凄みを持つ。
例えば、シャルキュトリーの盛り合わせや玉子のファルシーなど、簡単なオードブルや肉料理も、仕込みに膨大な手間を掛ける逸品。1皿入魂の料理は、装飾を極力排除し、その分素材に原価を掛けているという。
ワインはブルゴーニュのお手頃な銘柄をセレクト。半分以上は自然派で、それをグラス680円から用意する。食後にはアルマニャックやマールといった食後酒まで完備するのも心憎い。
「スタイルはカジュアル。けれど本物を提供する店でありたい」と、若きシェフの志は高い。カウンターに座れば、誰もがその想いを感じられるはずだ。