「自分だけが取り残されているような気持ちになる」俳優・竹中直人が追い求めた人とは

“ファッションは内面を写す鏡”と言われることもあるが、彼が愛するのは脱構築的な「コム・デ・ギャルソン」。予定調和を嫌う彼らしい。素敵である


現在のダンディな風貌からは想像しがたいが、聞くと、竹中さんが落ち着く場所は、今も昔も世田谷区下北沢。演劇の街。行きつけのバーもあるという。

ちなみに、東京で東京を最も感じる場所は、東京駅・丸の内駅舎の中に位置する「東京ステーションホテル」。

子どもの頃、父親にならって松本清張の作品を読みふけり、清張が定宿にしていたそのホテルに興味を持ったらしい。

竹中さんは映画監督としても活動しているが、1997年の作品『東京日和』には、その改装前の館内が印象的に映し込まれている。

「2階のレストラン『ばら』(※現在の『ブラン ルージュ』)に連なる階段はロマンチックでした。あの感じが僕にとってはたまらなく東京。

でも、監督を務めた最新作『零落』は東京駅ではなく、浅野いにおさんの原作の雰囲気を感じつつ、上野駅でも撮影しました。

正面玄関口を出たところにある、あの広い歩道橋をエキストラ無しで撮りたかったんです」

「今でも自分だけが取り残されているような気持ちになることがある」


竹中さんは言った。

「すっごい昔から思っていることで、恥ずかしくて言い出しづらいんですけど、“どうせ俺なんて”という思考が強いんですよ。

石川啄木の短歌にあるでしょ。『友がみな われより えらく見ゆる日よ〜』って。その心情が、僕の中には常にあります。つまり、自分だけがひとり取り残されている感……」

意外だった。『無能の人』を撮った34歳の竹中さんが言うならともかく、大河で主演を務めきり、映画の世界では日本アカデミー賞最優秀主演男優賞などの栄誉に輝いてきた実力派だ。

しかも、俳優や映画監督の他に、コメディアン、写真家、画家、ミュージシャン、エッセイストなど、多彩な分野で活躍してきた才能の持ち主。胸を張ってもいいくらいである。

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