未来の渋谷はどう変わる?広告代理店出身の渋谷区長が語った、今後の街づくり

2019年に新庁舎となった渋谷区役所の最上階にある区長室。渋谷の街が一望できる


「そもそも、大正時代には明治神宮ができるほどですから、そのあたりには広大な原っぱがありました。

それに、『鍋島松濤公園』あたりはいわゆる外様から払い下げられた土地という点も渋谷が田舎であった証だと思います。

戦後、米軍の将校たちの宿舎だった『ワシントンハイツ』の存在はやはり大きくて、彼ら相手の商売が成り立ったわけです」

話によれば、奥渋エリアに本店があるクリーニング店の『白洋舎』や、原宿駅前のマンション、コープオリンピアの1階にある中華料理店『南国酒家』はその名残だという。

「渋谷という街は、和の文化の上に洋の文化が複層的にフュージョンした独特な街です。京都や鎌倉のように200年、300年と続く老舗がないのも、新たなものが生まれやすい理由のひとつかもしれません」

変わり続ける都市の宿命は、こうした歴史の賜物かもしれない。

「昔懐かしいものが失われていく寂しさは当然ありますが、トータルで見ればポジティブに感じています。

昔はここで一旗揚げようという、上向きなマインドの人が数多く集いましたから、今後も街が持っているそうしたエネルギーは大切にしていきたいと感じています」

ワクワクする渋谷=未来に挑戦する街

ハチ公像とともに親しまれた駅前の鉄道車両5000系、通称「青ガエル」。秋田県大館市に移送される際の様子をミニカーにしたものが区長室に飾られていた


街のDNAを感じながら、未来へとバトンを繋ぐ役割を担う区長。大人が楽しめる街としての未来像をどう描いているのだろうか。

「たとえば、再開発の一方で古き良き“百軒店”や“のんべい横丁”などもあります。ふらっと寄って、飲んで食べて帰る。

あの佇まいはユニークですが、老朽化を考えると将来的には安全性に不安が残る。建物の維持が難しくなったときにどうするか。このあたりも課題です。

コンセプトはそのままに形を変えて継続させていくことも一案かなと思います」

再開発事業は、「都市の課題解決の側面がある」と区長。渋谷駅東口の地下に雨水を貯める貯留槽を設置し、浸水しやすい谷底地形の弱点を解消する話はよく知られるところ。

そういった都市基盤などの整備を行うことで、容積率1,400%を認可して、高層建築を実現させているのだ。

「都市の課題解決と発展を同時に行えるのが理想的です。

僕の原点にはストリートカルチャーがありますので、裏通りの路面店などに対しても、文化発信のインセンティブを設けながら、都市の耐震力を高めるようなルールづくりを準備しています」

続けて、広告代理店出身らしく渋谷の魅力をピーアールしてくれた。

「今、渋谷という名が包括するエリアは広がっています。もちろん渋谷区なので当たり前ですが(笑)。

たとえば、西参道の価値を高める新プロジェクトや、玉川上水旧水路緑道を“ファーム”をテーマに再開発するプロジェクトなどが進行しています。

“遊んでよし"という街から、“住んでもよし”という魅力を追求している最中。渋谷の価値を高めていくチャレンジをどんどん提案していきたい。

この街を好きになっていただけたら、いずれは住んでいただきたいのが、区長のホンネです(笑)」

区長という重責を担いながら、気のいい兄貴のように存在感も語り口も実に軽やか。

そんな区長の存在が、今の渋谷を象徴しているとも言える。今後もその動向に注目していきたい。


【長谷部区長、オススメな大人のお店を教えてください!】

ワインが合うモダンチャイニーズ『琉球チャイニーズ TAMA』


「店主が小中学の同級生で、店のオープンから深く関わったので、“自分の店”くらい愛着があります。遅くまで開いているのも魅力。最近は蒸し野菜が好きですね」

今月の『東京カレンダー』は「大人は渋谷を賢く使う」特集。渋谷デートも大人が楽しめる実力派レストランならもっと楽しくなる!

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