ふとすれ違った人の香りが元彼と同じ香水で、かつての記憶が蘇る…。
貴方は、そんな経験をしたことがあるだろうか?
特定の匂いがある記憶を呼び起こすこと、それをプルースト効果という。
きっと、時には甘く、時にはほろ苦い思い出…。
これは、忘れられない香りの記憶にまつわる、大人の男女のストーリー。
Vol.1 結菜(24歳)甘く切ない思い出の香り
JO MALONE LONDON「ウッド セージ & シー ソルト」
「おつかれ〜」
「疲れたね、お疲れさま!」
私は、西新橋の『焼肉・ホルモン在市』で同期の山口風磨とビールで乾杯した。
大手の証券会社で働く私たちは、同じリテール部門に所属していて、今年で入社2年目になる。
数字を求められる部署なので、風磨とはライバルであり、相談や愚痴をこぼせる唯一の存在でもある。
「そういえば結菜、先週会社辞めたいとか言ってたけど、本気?」
風磨が上タンを焼きながら、私に聞いた。
会社では、「鈴原さん」「山口くん」とお互いを名字で呼び合っているから、風磨に名前で呼ばれるとドキッとする。
ただ、風磨には学生時代から付き合っている遠距離の彼女がいるから、恋仲になることはないのだが…。
「本気…だけど本気じゃない。まあ、いつかは…ね」
「ははっ」
風磨には何度もこの話をしているから、もう真剣には聞いてくれない。
学歴は普通で、アピールできるものも特にない私。だから、誰もが知る大手の内定をもらえたことは嬉しかった。
ただ、多少は覚悟していたものの、証券会社は朝が早いし夜は遅い。ノルマもあるし、変動する経済を毎日勉強していないと確実に置いていかれる。
そのことが、日に日にストレスになっていた。
「俺はまだ頑張ろうって思うかな。課長みたいに早くなりたいし」
風磨は、2杯目のビールに口をつけながら言った。
「そうね…課長って、本当にかっこいいよね」
私は風磨のペースに合わせようと、残りのビールを飲みきってからつぶやいた。
この記事へのコメント
でも結菜に彼氏がいたのが唯一の救いかなぁ。
商社マンの彼に選んでもらたらいいね♡
これは、以前あったワインの連載とか最近始まった高級時計の連載にも似ていて、次どんな香水が紹介されるのか楽しみ〜!