
日本を象徴する食材で、独自のフレンチを表現
日本人が日本でフレンチをやる意味は何なのか。シェフの川手寛康氏は、常にそのことを念頭に置きつつ料理に向き合うと言う。食材に国境はなし。だからフランスよりも優れた食材が日本にあれば、俄然腕が鳴る。
我が国で古くから珍重されてきたすっぽんもそのひとつ。「子どもの頃、祖父が獲ってきたものを食べていたので、身近な存在でもあるんです」。日本料理でのすっぽんは、独特の臭みを極力排除していく。だが、川手氏はその臭みこそすっぽんの個性と考える。もちろん、丁寧な下処理は欠かさない。それでも残る部分は敢えて隠さず、旨みに変えるのが川手流。
今回のすっぽん料理は、ほぐした身を煮こごり状にして表面を焼いたもの。切ればあらゆる部位がゴロリと現れ、その凝縮感は秀逸だ。