お金も時間も自由に使える、リッチなDINKS。
独身の時よりも広い家に住み、週末の外食にもお金をかける。
家族と恋人の狭間のような関係は、最高に心地よくて、気づけばどんどん月日が流れて「なんとなくDINKS」状態に。
でも、このままでいいのかな…。子どもは…?将来は…?
これは、それぞれの問題に向き合うDINKSカップルの物語。
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彩奈・32歳。DINKSライフが楽しくて…【前編】
土曜日の8時。
乃木坂の自宅マンションで目覚めると、広いベッドに夫・祐樹の姿はなかった。
キッチンで物音がするので、きっと朝食の準備をしているのだろう。
ごろごろと寝転がりながら、私はスマホをチェックする。
昨晩投稿したInstagramのストーリーズに、友人たちから反応が届いていた。
『“コンラッド東京のトゥエンティエイト”だ~、ステキ♡』
『彩奈と旦那さんって、本当にお似合いだよね!』
昨晩は、外資系コンサルティングファームに勤務する祐樹が、珍しく早く帰れるというので、久々にディナーすることになった。
2人の写真をSNSにアップしたけど、友達からの反応は上々だ。サプライズで祐樹からもらった花束も、よく写真映えしている。
― 我ながら、幸せそうな顔してるわ。まあまあ盛れてるし…。
上機嫌で友人たちに返信を打っていると、祐樹が部屋に戻ってきた。
「彩奈。おはよう、朝ゴハンできてるよ」
「ありがとう。なんかいい匂いがする~!」
久しぶりに祐樹が食事をつくってくれたから、テンションが上がる。
日ごろ祐樹は、キッチンにはほとんど立たない。外資系メーカーでマーケティング職に就いている私もそれなりの忙しさだが、祐樹よりは時間が取れるので、家事は主に私の担当だ。
だから祐樹が料理してくれると、なんだかスペシャルな感じがして嬉しいのだ。
「すぐに着替えるね!」
そう言って立ち上がると、不意にお腹に違和感を感じた。
― あれ。もしかして…。