ごめん、今日も遅くなる。 Vol.6

同棲中の彼に、突然「別れたい」と言われた女。前に進むため彼の荷物をまとめようとしていたら…

部屋に明かりがついているのだ。そして、鍵がかかっていない。

― え、賢也?荷物でも取りにきたのかな。

不審に思いながらドアを開けると、廊下に賢也が突っ立っていた。

「え?どうしたの?」

「いや…」

「荷物?言ってくれたら、まとめて送ったのに。でも、ちょうどよかった。この部屋の解約について、ちょうど今日電話しようと思ってたの」

明治屋の紙袋を玄関に置き、サンダルに手を掛ける。そのとき賢也はかすかな声で「あのさ」と言った。

それから、決まり悪そうに頭を掻く。

「柚…」

「ん?」

「やり直したい」

柚は、玄関でサンダルを脱ぎかけたまま静止する。

「…はい?」

「ごめん。勝手だってわかってる。でも、やり直したいんだ」

柚は真顔で賢也を押しのけ、廊下を進んだ。紙袋をテーブルに置いて、深いため息をつく。


「なに?もしかして、あの人にフラれたからって戻ってくるの?それは、勝手すぎるでしょう」

自分が思ったよりも、冷たい声が出た。

「違う」

「何が違うのよ?」

「…柚を失ってみて、わかったんだ。俺、たった数日で死ぬほど後悔した」

― この人、今さら何言ってるの?あの夜、私をタクシーに押し込んで去っていったくせに!

「あんなふうに一方的に『別れよう』って言っておいて、元に戻れるなんて思わないでよね」

柚は紙袋の中身を手際よくキッチンに並べながら言う。賢也は、寂しそうにそれを見つめた。

「俺、柚のご飯また食べたい…」

― …なにそれ。

身勝手すぎる言動。腹が立つ。

しかし、だからと言って賢也を無理に追い出そうという気持ちにはなれない。

「…なに。ご飯まだなの?」

「まだ」

「そう」

一緒にいて4年目。もう家族相手みたいな情がわいてしまっているのかもしれない。

「じゃあ作ってあげるから、シャワーでも浴びてて」

一切微笑みはしなかったが、2人分の食事を用意した。

「いただきます」

シャワーからあがった賢也と共に、向かい合って箸を動かす。会話はなく、せっかくの生姜焼きもどこか味気なく感じられた。

お互いのお皿が空になりかけたとき、賢也が突然話し始めた。

「実はさ、俺が戻ってきたのはね…」

賢也の話は、予想外なものだった。

柚は思わず、持っていた箸を落としそうになった──。


▶前回:店を出た途端、女は彼氏に向かって泣き叫び…。幸せなディナーデートがぶち壊しになったわけ

▶1話目はこちら:「あの女を、誘惑して…」彼氏の浮気現場を目的した女が、男友達にしたありえない依頼

▶Next:7月1日 金曜更新予定
賢也が戻ってきた、まさかの理由とは?

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この記事へのコメント

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No Name
あぁ、もうすごいイライラする展開。
2022/06/24 05:0999+返信5件
No Name
この連載に出てくる人たち、全員最低だなぁって思う。 
穂乃果さえいなければこんな事にならなかったと思う柚も間違ってるし、数日しか経ってないのに、のこのこ現れてやり直そうとか言う謙也もどうかしてる。
2022/06/24 05:1176返信1件
No Name
好きでも何でもない人が作った手料理を食べたいなんて…どういう心境?
2022/06/24 05:1354返信3件
No Name
創が、任務完了で穂乃果に冷たくするとか音信不通にすれば、穂乃果も賢也の方に戻ってくるかもよ。そしたら、また賢也は柚を捨てるけど、それでいいの?
2022/06/24 05:4336返信2件
No Name
賢也、帰ってくるなよ。
2022/06/24 06:4824
もっと見る ( 37 件 )

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