ごめん、今日も遅くなる。 Vol.6

同棲中の彼に、突然「別れたい」と言われた女。前に進むため彼の荷物をまとめようとしていたら…

「ねえ。賢也にフラれた」

すると創からはすぐに「大丈夫?」と電話がかかってきた。

「最近早く帰ってくるようになったって言ってたのにな。俺、てっきり賢也はこのまま柚のもとに戻ると思ってたわ」

「私も思ってた…。でも賢也は、穂乃果さんを全然諦められないみたい」

鼻をすすりながら柚は話し続ける。

「今頃賢也は、穂乃果さんに思いをぶつけてるの。大好きだって伝えてるの…」

「そうなんだ」

創はさっぱりとした口調で言った。

「でも穂乃果さんは今、俺に夢中だよ。毎日のように『会いたい』って言われるし。賢也が気持ちを伝えたところで、またフラれるんじゃないかな」

「そうね…」

賢也がいくら愛を伝えたところで、穂乃果に断られるだけだろう。…それは、柚にとって唯一の救いであった。

― だって、このまま賢也の恋がすんなりと実るのだけは、納得いかないから…。

結局「賢也を取り戻す」という当初の目的は達成されなかったが、その点においては、創の存在に感謝をするばかりだ。



翌日も、翌々日も、賢也からはなんの連絡もない。

― 私たち、本当に別れてしまったんだ。

在宅勤務中もそのことを実感してしまい、何度も涙があふれた。

部屋にいると、いろいろなものが目に入るのだ。賢也と行った旅行のお土産。賢也の育てていたサボテン。

楽しかった頃の記憶が、柚の涙腺を刺激してくる。


しかし、3日も経てば柚は冷静になった。

“柚にすがりつかれても、俺はもうなにも感じない”

あのとき賢也は平気でそう言ってきたのだ。

― あんなことを言うなんて、かつての賢也とはまるで違うわ。

もう以前の賢也は、この世には存在しないも同然だ。そう思うことにした。

― 今夜、思い出の品は全部捨ててしまおう。賢也の荷物もまとめてしまおう。それから、この部屋も解約しよう。ここの家賃は、私1人では払えないし…。

ようやく前を向ける気持ちになった柚は、仕事を終えて食材を買いに行く道で、創にまた連絡を入れる。

「もう私、賢也のことはさっぱり忘れることにしたわ」

「へえ、急にどうしたの?」

「…賢也がどうなっても、自分の人生には無関係だって思えてきたわ。あの人、ひどいから。もういいの」

「じゃあ俺の変わったミッションも、もう終了だね?」

創は、ほっとした様子で笑った。

「うん。本当にありがとう。結局創にも、それに穂乃果さんにも迷惑をかけたわ…」

自分の勝手なお願いに付き合ってくれた創に感謝をしながら、明治屋に入る。

― 今日からは久しぶりの1人暮らしを楽しむんだから。

自分の好きな食材だけが入った紙袋をぶら下げ、部屋まで帰ってきたそのとき。

柚が目にしたのは…まったく予想外の光景だった。

この記事へのコメント

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No Name
あぁ、もうすごいイライラする展開。
2022/06/24 05:0999+返信5件
No Name
この連載に出てくる人たち、全員最低だなぁって思う。 
穂乃果さえいなければこんな事にならなかったと思う柚も間違ってるし、数日しか経ってないのに、のこのこ現れてやり直そうとか言う謙也もどうかしてる。
2022/06/24 05:1176返信1件
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好きでも何でもない人が作った手料理を食べたいなんて…どういう心境?
2022/06/24 05:1354返信3件
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創が、任務完了で穂乃果に冷たくするとか音信不通にすれば、穂乃果も賢也の方に戻ってくるかもよ。そしたら、また賢也は柚を捨てるけど、それでいいの?
2022/06/24 05:4336返信2件
No Name
賢也、帰ってくるなよ。
2022/06/24 06:4824
もっと見る ( 37 件 )

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