2022.05.27
不動産選びの答えあわせ Vol.10
“海に近いエリア”といっても色々あるが、どうして葉山に決めたのだろうか。
「横浜の高校に通学していたこともあり、湘南エリアには馴染みがありました。鎌倉、逗子、由比ガ浜あたりをターゲットにして、移住先探しを始めました」
鎌倉は、駅前が栄えすぎていて東京に住んでいるのと何も変わらない感じがしたそう。また、週末は混雑するので『ナシ』と判断。
逗子は、ヤシの木がずらりと並んでフォトジェニックではあるが、観光客が多く『ナシ』に。
「逗子に行った帰りに、タクシーの運転手さんから『住むなら葉山がいいよ』と言われ、その足で葉山マリーナまで行ったんです。
タクシーを降りて、葉山の街と海を見て『ここだ!』と思いました。私の思い描いていた街そのものだったんです。
静かで、穏やかな雰囲気で。イケてるおじさまがクルージング船から降りてくる姿があって…」
葉山への移住を決めたものの、なかなかよい物件が出てこなかったという。
「昔から住んでいる人は、戸建てに住んでいるので、マンションの数自体が少ない地域なんです。あったとしても、1人暮らし用のコンパクトサイズか築年数が古いものばかりで…」
そんなとき、ネットで葉山エリアに特化した不動産会社の方が書いているブログを見つける。そのブログの内容に魅力を感じた英美さんは、すぐにブログを書いていた人に連絡をして、移住の相談をした。
そして、現在住んでいる一軒家を紹介してもらったのだ。
物件は、とても気に入ったものの、夫婦ともに仕事を持っているため、いざ移住となっても、そう簡単に決断できるものではない。
東京から葉山までは、電車をうまく乗り継いで1時間ちょっととアクセスは決して悪くないが、物理的に距離が離れることにより、これまで恩恵を受けていた東京暮らしの快適さを捨てることも意味する。
悩んでいた英美さんの背中を押したのは、葉山の自然だった。
「物件を紹介してもらった帰りに『ついでに一色海岸が近いので見て帰りますか?』と言われ散歩しに行きました。そのとき、本当に美しい夕景に出会いました。
息を飲む、言葉を失くす、目を奪われる……そんなありきたりな言葉では説明できないくらい美しい景色に衝撃を受けて、交通の便が悪くても、絶対にここに住みたいと思いました」
その後、すぐに物件の申し込みをした英美さん夫婦。葉山への移住を思い立ってからわずか1ヶ月で引っ越したというから、その行動力には頭が下がる。
「何事も勢いですよ! 住んでみればなんとかなります!ブログを通じて知り合った不動産会社の女性も、移住してきた方だったんです。
彼女が、移住者コミュニティーを紹介してくれたり、ご近所のカフェを案内してくれたり、葉山に住む際のテクニックなどを教えてくれたりしたので、思っていた以上にすんなりと馴染むことができました。
テクニックですか?海の近くは、湿気が多いので玄関の下駄箱に『炭』を置くとかそういう感じです!」
地方移住を成功させるポイントは、その地域に強い不動産エージェントを見つけることから始まるのかもしれない。
英美さんの場合は、良いエージェントに巡り合ったことにより、素敵な部屋を見つけることができたのはもちろん、地域のコミュニティーに溶け込む橋渡しをしてくれたこともポイントだ。
それでは、いよいよ本題。
葉山に住んでよかったこと、悪かったことを聞いてみた。まずはメリットから。
「いちばんのメリットは、都内へ出るのに時間がかかる分、本当に行きたい場所、会いたい人としか会わなくなり、人間関係がシンプルになったことでしょうか。
また、暮らしが丁寧になった気がします。早起きをするようになり、SUPや散歩で体を動かすようになりました」
とくに食に対する意識が大きく変わり、畑を有志で借りて野菜づくりも始めたり、味噌も作っているそうだ。
「地場産のおいしい野菜を買いに横須賀まで車を走らせたり、なんてこともしています。昔の自分からは想像もつかない変化です。
いろいろな意味で、自分自身が健康になったこと。これも、移住したことによるメリットかもしれません。
また、美しい自然や環境のことを守りたいと強く感じるようになりました」
葉山の美しい自然を守りたい、葉山のある日本を、世界を、地球を、すべてを守りたい。そんな気持ちが生まれているという。
「葉山のイメージ的に、お金持ちばかりの街、ちょっと高飛車系な街っていうイメージがあったのですが、そんなこともなくごくごく普通の方が多かったのも驚きでした。
住み心地の良さ、自然環境の良さ、そうしたさまざまな面から見て、葉山は移住するのに最適な街だと思います」
では、デメリットは?
「都心と違い、ほどよく田舎のためコミュニティが狭く、あっという間に噂が広まってしまう点は、デメリットと言えるかもしれませんね。
私のこともいつの間にか知られていて、街を歩いていたら『あなた、東京から来たんだって?』ってバンバン話しかけられました」
よく言えば『気さく』、悪く言えば『ベッタリ』だという。でも、英美さんは、コミュニケーションを取ることが好きな性格なので、とくに問題なく暮らしているそうだ。
「あと、気になることといえば、いわゆる“田舎時間”っていうんでしょうか。あまりにのんびりし過ぎていて、ついイライラしてしまうことがあります。
例えば、レストランで食事が出てくるのが遅いとか、修理を頼んでもなかなか来ないとか…。
都心のお店レベルやホスピタリティーを期待してはいけない、と頭ではわかっているのですが…。東京育ちゆえのせっかち気質のせいか、最初は慣れなかったですね」
また、デメリットというほどではないが、ごみの分別が細かくて、最初のうちはかなり戸惑ったそうだ。
空き瓶は色別に分ける。壊れた傘は、傘布を外してから捨てる。空き缶はアルミとスチールを分ける。容器包装プラスチックと、プラスチックごみに仕分けする……。
「でも、こうして徹底しているからこそ、葉山のきれいな自然が保たてれているのだと納得しています。家の中には、種類別にごみ箱を4つ置いて対応しています。今では、ごみの分別が趣味の1つになっています」
葉山に移住して5年。
コロナ禍もあって30代女性がひとりで移住してくることもあり、今では移住仲間が増え快適に暮らしているという英美さん。
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