天敵な女 Vol.3

気合を入れて参戦した食事会、個室の扉を開けると…。そこにいた招かれざる客とは

時間より早くついてしまった私は、指定された店の少し手前で降りた。

時刻は18:45。

徐々に薄暗くなり、夜の活気を帯び始める六本木を歩いていると、ようやく1日が始まるなという感覚がする。

別に夜の仕事経験があるわけじゃないし、どちらかというとお堅い会社で働いている。

それでも、ギラっとした男たちに女として見られることを生き甲斐に感じる私にとってやはり、夜の街がホームタウンなのだ。

気分よく散歩していると、ブブっとスマホに新着メッセージが届いた。

<大志:今日の夜、少し電話できる?>

この高揚感に、水を差す。…いや、自分が悪い事はわかっているのだけれど。

<真帆:ごめん、今日ちょっと仕事なかなか終わらなさそうで…。明日でもいい?>

何も考えずに、つらつらとあることないこと出てくるあたり、自分大丈夫かなと不安がよぎる。

彼は名古屋の老舗企業の跡取り。

仕事で東京に来ているときに出会った。彼が一目惚れしたとすぐにアプローチしてきて、すぐに付き合いはじめた。

男からチヤホヤされることを生き甲斐に感じる私だけれど、今年で27歳。“女”として、強く求められ続ける未来はそう長くないということは理解していた。

だから、どこかで引き際を設けなくてはいけないと思い、諸条件揃っている彼からのプロポーズを受けたのだ。

けれど、幸か不幸か彼とは遠距離恋愛。

私の仕事がひと段落する今年の夏から、名古屋で一緒に暮らし始めようという話をしている。

さすがの私も人妻になったら落ち着くつもりだ。だから、東京の男たちにチヤホヤされるのはそれまで。

私に残された時間は、約半年。最後のモラトリアムなのだ。

それまではラストスパートをかけて、自分が“女”であるということを享受しようと決めている。

<愛華:ちょっと早いけど、ついちゃった!今日はイケメン弁護士だよ~>

高校時代からの友人からの連絡に、ついつい速足になる。

― 大志、ごめんね。結婚してからはちゃんとするからさ!

心の中で彼への罪悪感を消化し、私は指定された店へと急いだ。

はじめて行く店で少し迷ってしまったこともあり、約束の時間を少し遅れてしまった。

案内された個室は、扉を開ける前から盛り上がってる様子が伝わってくる。

手櫛で髪を整え、口角をキュッとあげ、私はその扉を開いた。

そこには愛華の予報通り、金色のバッチを胸に付けたイケメンが数名並んでいたのだが…。

「お待たせしました~」

そう言って、部屋に入った瞬間―。

私の背筋は凍り付いた。


「真帆~、久しぶり~!!」

不気味な笑みを称えた女が、私に手を振っている。

「…え」
「どうしたの!?そんなびっくりしないでよ~」

その笑顔の主は、…凜香だった。

「え、何、女の子たちみんな知り合いなの?」
「やっぱ可愛い子たちって繋がってるんだね~」

驚く男たちを横目に、凜香は微笑み続ける。

その笑顔が、本心から湧き上がっているものでないことは、きっと私しか知らない。

「久しぶり…」

私は、引きつった笑顔でそう返すしかなかった。


▶前回:週刊誌に売られたトップアイドル。SNSの裏アカをのぞいて確信した、自分を売った犯人とは

▶1話目はこちら:清純派のフリをして、オトコ探しに没頭するトップアイドル。目撃した女は、つい…

▶Next:5月22日 日曜更新予定
次回:お食事会に突如登場した、因縁のライバル・凜香。彼女の思惑とは…?

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この記事へのコメント

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No Name
大志に写真送って婚約破棄させるんでしょう、全く。
2022/05/15 05:4263返信3件
No Name
この連載、2人の心理戦ってかバトルで構成されるの?最初は重いって思ったけど今は怖いけど楽しみ。
2022/05/15 05:2553返信2件
No Name
こんなしけたマンション住んでんだ、犬小屋みたい。
凛香、口が悪すぎる。
2022/05/15 05:4948返信7件
No Name
凛香にも真帆にも、全く微塵も共感/応援 出来ない。もっと大人になれば...
2022/05/15 06:0828
No Name
お食事会に行った写真を撮られたくらいでCM
降ろされたりするかな?
2022/05/15 05:4324返信1件
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