再構築夫婦 Vol.1

再構築夫婦:「ごめん、魔がさした」夫のスマホに密会を匂わせるLINE…。幸せな家族を襲った危機

あふれた水は、戻らない。割れたガラスは、戻らない。

それならば、壊れた心は?

最愛の夫が犯した、一夜限りの過ち。そして、幸せを取り戻すと決めた妻。

夫婦は信頼を回復し、関係を再構築することができるのだろうか。


幸福な家族像が砕け散るとき


かわいい娘。子煩悩な夫。優しい義理の父と母。

どこからどう見ても、何一つ不自由のない、完璧に幸福な家族のように見えるだろう。

私は…そう、私だけが、そんなふうに思っていた。



ピアノの発表会は、すべての演目が終わってもまだ夕方の4時だった。

会場の窓から見える表参道の景色は、陽はかげり始めているものの、イルミネーションはまだ点灯していない。

黄色く色づいたけやき並木をバックに、娘の絵麻の真っ赤なドレスがよく映える。小学1年生にしては小柄な絵麻の体は、先ほど祖父母からもらった大きな花束でほとんど隠れてしまいそうだった。

「絵麻、上手だったなー!まだ時間もあるし、このままキデイランドに行って、何かご褒美を買ってあげようか?」

「本当に!?絵麻、すみっコぐらしの文房具セットがほしい!学校でお友達みーんな持ってるの」

愛娘の晴れ舞台に目尻をずっと下げているのは、夫の孝之だ。

その横で、絵麻の祖母である義理の母が、大きなパールのイヤリングを揺らしながら私にニコッと微笑みかける。

「どうにか無事に開催できてよかったわね。美郷さん、色々と大変だったでしょう。しばらくは家のことも絵麻ちゃんのことも、孝之に全部まかせてゆっくりしちゃいなさいね」

品のいいスーツに身を包んだ義理の父も、ニコニコとした微笑みを浮かべながら絵麻を褒め続けていた。

かわいい娘。子煩悩な夫。優しい義理の父と母。

どこからどう見ても、何一つ不自由のない、完璧に幸福な家族のように見えるだろう。

私も、そんなふうに思っていた。

でも今は、こんなに心温まる美しい光景のなかで、私の心だけが冬の夕暮れのように薄暗く冷えきっている。

疑いようのない幸福はすでに失われていた。

幸せだった1週間前とは、今はもう何もかもが違っている。

それも当然。私と孝之は、“再構築”を始めたばかりなのだから。

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