2021.12.01
再構築夫婦 Vol.1すべてが変わってしまった、1週間前の出来事
いつもと同じような朝だった。
家族3人で朝食を取ったあと、たっぷりと朝日が差し込むリビングで、私は絵麻の薄茶のくせ毛を編み込みにする。
その横で、孝之が慌ただしく身支度を整えていた。電気シェーバーでヒゲを整えながら、コンパクトなリモワのトランクに必要な荷物を放り込んでいく。
「出張なんて久しぶりだから、何を持っていくべきなのか、わからなくなってるな。とりあえずスマホの充電器だけ持っていけば大丈夫だよね」
充電ケーブルをクルクルとまとめながら、孝之が私に話しかける。
「出張って言ったって、大阪にたった1泊でしょ?足りないものがあれば、あっちで買えばいいじゃない」
「まあ、そうなんだけどね。新幹線に乗るのも久しぶりだし、なんだかワクワクしてるんだよ」
私の提案にいたずらっぽく答える孝之は、今年で40歳になるというのにまるで絵麻と同じくらいの子どもみたいだ。
これでも、そこそこの規模の不動産会社の経営者だというのだから、時折心配になってしまう。
「まずい!もうこんな時間か。下にタクシー待たせているからもう行くよ」
慌ただしく出ていく孝之を玄関まで見送るのも、結婚してからほとんど毎日続いている習慣だ。
「行ってらっしゃい。出張、気をつけてね」
「行ってきます。美郷、愛してるよ」
見送る私の頬に、孝之はそう言って小さなキスをする。
そんないつものやりとりを、ちょうど制服に着替え終わった絵麻がしっかり目撃していた。
「もう、パパったら!絵麻が見てるじゃない。いい歳していやになっちゃう」
気恥ずかしさのあまりそんなセリフでお茶を濁すけれど、お調子者でいつまでも恋人のように振る舞いたがる孝之は、いつだって娘の前でもお構いなしだ。
そんな私たちを見慣れている絵麻も、いつもと同じように冷やかしの言葉を投げかけてくる。
「ねえ、パパ。パパって本当にママのことが大好きだよねぇ」
「そうだよ。でも大丈夫だぞ!パパはもちろん、絵麻のことも愛してるからね!」
じゃれあう2人が「いってきます!」の挨拶とともに弾丸のように飛び出していくと、家はまるで別世界のようにすっかり静かになった。
私は玄関で大きく伸びをすると、リビングに戻って朝食の後片付けにとりかかり、自分のためのコーヒーを入れる。
ここまでは、いつもと代わり映えのしない朝だった。
だがこの日は、コーヒーを持ってソファに腰を下ろしたとき、目の前のテーブルにあるものが置いてあったのだ。
私1人となったこの家に、いつもならば存在しないもの。
それは、孝之のスマホだ。
「え…?孝之ったら、出張なのにスマホ忘れてる!」
充電ケーブルをトランクに入れても、肝心のスマホを忘れていたのでは世話がない。
すっかり呆れてしまうが、無視するわけにもいかないだろう。だが、孝之に連絡を取ろうにも、スマホがここにあるのだから手の施しようがない。
「どうしよう。品川まで急いで追いかけて、届けたほうがいいのかな…」
大阪には新幹線で行くと言っていた。自宅の白金からタクシーに乗って、品川駅の港南口までは10分もしないはずだ。孝之が出ていってから、もう15分近く経つ。
急いで追った方がいいだろうか?それとも、私が着く頃には発車してしまうだろうか。
とりあえず、何時発の新幹線なのか、確認しなければいけない。
きっと、このスマホでLINEを開いて、秘書の木村可奈さんとのやりとりを見れば書いてあるはず。
勝手にスマホを見るのは気が引けるけれど、事情が事情。非常事態。そう判断した私は、意を決して孝之のスマホに手をかける。
パスコードは、すでに知っているのだ。
って題名再構築夫婦だし、1ページ目に再構築を始めたばかりって書いてあるのにそれともがあるの?雑じゃない?
【再構築夫婦】の記事一覧
2022.02.09
Vol.12
「“再構築”なんてできるわけない…」離婚届に記入し、再出発を決意したサレ妻が向かった先とは
2022.02.08
Vol.11
夫の浮気を許し、幸せを取り戻すと決めた妻。“再構築”の行方は…?「再構築夫婦」全話総集編
2022.02.02
Vol.10
深夜のオフィスで男友達と2人きり。夫の浮気を相談していたら、急に彼の体が近づいてきて…
2022.01.26
Vol.9
夫に男友達との浮気を疑われたサレ妻。ショックのあまり向かった先は、自宅でも実家でもなく…
2022.01.19
Vol.8
「夫を受け入れなければ…」ベッドの中でそう考えたサレ妻に、夫が浴びせた衝撃の言葉
2022.01.12
Vol.7
「いい暮らしを続けたいなら、夫の浮気くらい目をつぶりなさい」姑の言葉に怒りがこみ上げた女は…
2022.01.05
Vol.6
「就活もやめて結婚したのに…」夢を諦めた妻を追い詰める、裏切り夫のヤバい行動
2021.12.29
Vol.5
夫に内緒で男友達と密会。上機嫌な妻が自宅に帰ると、待ち受けていたのは…
2021.12.22
Vol.4
「本当に仕事なの?」夫に疑心暗鬼のサレ妻。久々にFacebookを開くと、懐かしの彼から連絡が…
2021.12.15
Vol.3
夫の浮気相手と三者面談。慰謝料は拒否され、泣きながら「彼を愛していますか?」と聞かれ…
おすすめ記事
2017.12.26
人事部は見た!
人事部は見た!:部署内をザワつかせた人事異動。その裏で暗躍する黒幕の、派手な私生活
- PR
2024.11.20
銀座で女性と過ごす夜。アイリッシュウイスキーが引き寄せた、2人だけの密やかな高揚とは
2017.08.26
恋愛中毒
嫉妬と独占欲ゆえ、“一線”を越えた妻。その背後に忍び寄る、女の影
2018.03.19
婚活は、ビジネススクールで!?
恋も仕事も、全然ダメ…。自信喪失中の28歳OLが輝きを取り戻した、婚活にピッタリな場所
- PR
2024.11.18
総勢100名に当たる!西友&東急ストアで「スプリングバレー」を買って東カレ厳選グルメをもらおう!
- PR
2024.11.21
クリスマスは絶景を望むホテルデートへ!彼女がワッと喜ぶ、とっておきの夜を丸の内で過ごすなら…
2024.02.10
報われない男
報われない男:24歳の美男子が溺れた、34歳の人妻。ベッドで腕の中に彼女を入れるだけで幸せで…
2016.08.28
独りですが何か
独りですが何か:33歳未婚。仕事が恋人で何が悪い?
2017.04.28
赤坂の夜は更けて
23時の赤坂で会う「ご飯友だち」ナンバーワンの男。私はなぜ、彼を好きになれない?
2019.02.24
実家暮らしの恋
キラキラOL保つため、1人暮らしで貯金ゼロ…。商社勤務の24歳女が妬む、実家暮らしの愛され美女
東京カレンダーショッピング
『佐藤養助商店』:門外不出の技による、喉ごし滑らかな"稲庭干饂飩"
『かに物語』:ふっくらと肉厚な一本爪が2本入ったフレンチカレー
『西岡養鰻』:特製タレ付き!脂の乗った高品質な鰻を土佐備長炭で丁寧に焼き上げた蒲焼
『マルヒラ川村水産』:ご飯に載せて贅沢いくら丼!1粒1粒に旨みが凝縮された、とろける食感の北海道函館産天然いくら
『North Farm Stock』:北海道産ミニトマト使用!糖度が高く、コクとうまみがたっぷり詰まったトマトジュース
『ル・ボヌール 芦屋』:フリーズドライフルーツにホワイトチョコがたっぷりと染み込んだ新感覚スイーツ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"
この記事へのコメント