2021.11.09
生まれながらに不平等 Vol.2東京で暮らすには、年収1,000万じゃ足りない
「楓ちゃんって、子どもができたら私学とか行かせたい?」
2人ともお酒がまわり、いつしか話題は子どものことから教育についてへと移っていた。
「そうですねぇ。私学に行かせてあげられたらいいなとは、思いますけど」
「そっか。じゃあダブルインカム必須だね」
年収1,000万だと、インターには行かせられない。下から私学も、厳しいかもしれない。
家を購入する際も、1億は出せないだろう。そうなると都心で買えるのは狭いか、古いかのマンション。
もしくは港区や渋谷区アドレスを諦め、遠くへ行くしかない。
「僕は公立出身だから、こだわりはないんだよね」
「そうなんですか?私も公立なので、東京のお受験事情になかなかついていけなくて…」
「わかる!みんな必死にお受験してるけど、そこまではいいかなぁ。高校や大学から私学はアリだけどね」
2人で前のめりになって話しながら、不意に前回デートした“下から慶應ボーイ”のことを思い出した。
「金銭的な問題もあるし、別に公立でもいいじゃないか」とは思う。だけどこの東京でそう考えるのは少数派な気がして、強くは言えない。
― 東京でいい暮らしをしようと思ったら、年収1,000万じゃ足りないんだよなあ。
むしろ、どんな環境に身を置くかによっては、貧困層のように見られることもあるのかもしれない。
「…結婚しても、奥さんには働いて欲しいって思いますか?」
「どちらでもいいんだけど、もし欲しい物とかやりたいことがあるなら、稼いでもらっていた方がいいかな。本当に、どちらでもいいけど」
そして私は、話しながら気がついた。年収1,000万くらいが一番ツラいのかもしれない、ということに。
「楓ちゃん、食べること好き?気になってるお店が神泉にあるんだけど、よければ今度どうかな」
「いいですね!ぜひ」
ある程度の知識や見栄があるせいか、高級グルメは食べ慣れていて、舌が肥えている亮太さん。
そのぶん外食にはお金を使っているけれど、そのほかも羽振りがいいかと聞かれると、そうではないのだろう。
高級外車や高級マンションは、微妙に手が届きそうで届かないはずだから。
しかもがっぽり税金を持っていかれるのに、国からの手当てなどは対象外になりやすく、恩恵は受けづらい。
「三つ星系とか予約困難店とかではないんだけど、すごく美味しいらしいから、楓ちゃんと一緒に行けたらいいなと思ったんだ」
そう言うけれど、タクシー代はもちろんでない。タクチケもない。
亮太さんの服装をまじまじと見てみれば、その生活ぶりはなんとなく伝わってくる。
お気に入りのブランドなら買うけれど、ZARAやUNIQLOも着ている。決して派手ではないものの、ほんの少し華やかさもある暮らし。
これが年収1,000万の生活なのだろう。
そして“自分のランク”がなんとなくわかっているから、それ以上を求めることもなければ、卑下することもない。
「楓ちゃんって、親から大事にされて育ってそうだよね」
「そうですか?亮太さんのほうこそ」
「まぁうちは普通の家庭だったけど、親は仲がいいかな」
「素敵ですね。そういうの」
だが大概こういう男性は、お父さんが立派な会社に勤めていることが多い。大金持ちとまではいかないが、普通よりちょっといい暮らしができる家庭で育ってきている。
そしてまっすぐな愛情を受けた結果、穏やかで性格もいいのだ。
「楓ちゃん、今日はありがとう。またね」
電車で帰って行く亮太さんと駅のホームで別れた私は、不思議な気持ちになる。
タクシーが当たり前ではない。でもそれが“普通”だと知っており、無駄遣いはしないというスマートさも持ち合わせている。
「結婚するには、きっと彼みたいなタイプが一番いいんだろうな」
そう思った私は亮太さんに向かって手を振りながら、そっと心の中で「彼をキープする」と決意したのだった。
▶前回:婚活における“優良物件”のはずなのに、女から見切りをつけられたワケ
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派手な有名経営者のヒミツ
タクシー代はもちろん出ない?タクシーが当たり前ではない… だから?嫌なのかなって。しかも亮太はキープとか偉そうで。
昨日の渉さんも年収5千万で仕立ての良いスーツは着るけど、ほかそんなにお金をかけてないとも言っていたし。年収いくら以下はセコい、ユニクロやザラ着てたら貧乏くさいとか、関係ないんじゃないかな…
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