2021年も残りわずか。
大手IT企業勤務、28歳の陽太(ようた)は焦っていた。
この1年なにやっていたんだろうと。
仕事も恋も、思い描いていたシナリオと全然違う…。
これは一人の「こじらせ男子」が高嶺の花に挑戦する、令和の小さなラブストーリー。
2回目がない男【前編】
「陽太さん、今日はありがとうございました。それじゃ…あの、さようなら」
土曜午後のプラチナ通り、オープンテラスのカフェ。ロケーションも気候もパーフェクトな休日のランチデートだった。
それにもかかわらず、彼女は笑顔で、でもきっぱりと去っていった。
― ああ、またこのパターンか。
僕は、思わずため息を一つつく。
いつも通り、2回目のデートはないだろうという予感がした。それどころか、このあと一緒に行こうと思っていた映画にも誘えなかった。
今年も残りわずかなのに、僕は、最近ずっとモヤモヤしている。思い描いていた28歳とはかけ離れたまま、終わってしまいそうな気配があるからだ。
なんだか最近、仕事も恋も、いまひとつ乗らない。
大手IT企業でアプリ開発をしている僕は、最近ルーティンの仕事に追われて、新企画のアイデアなどが全然出せていない。
それに、彼女も見つけたいと思っていたのに…。
飲みに行く機会がなくなり出会いの数も減った。なんとかしなければと、友人に勧められたマッチングアプリに3ヶ月ほど前に登録してみた。
こんな僕でも、条件は悪くないからか、結構たくさんの「いいね」がつく。
ところが、なぜか1回目のデートのあとが続かない。今日で5人続けて、初回デートで終了パターンだ。
― あーあ。映画は一人で観るか…。
僕は、すでに予約済だった映画のスケジュールをスマホで確認して、ぶらぶらと歩き始めた。
一体なぜ、「2回目がない男」になってしまうのだろう。一つだけ言えるのは、顔が悪いとかいう問題ではないということ。
それについては、確かな「エビデンス」があるのだ。