2013.05.21
BISTROT DE LA CITÉ
午後への英気を養う
千円ステーク・フリット
ビストロと名のつくレストランは、日本に数多くある。だが、西麻布『ビストロ・ド・ラ・シテ』ほど、その名にふさわしい場所は、ない。
深紅のベンチシート、木のテーブル、ロートレックのポスターや古きパリの写真、ギシギシと音を立てる木の床、良き具合にくすんだ壁や柱……。そのすべてに、時間と客の愛着がたっぷりと染み込み、成熟した店だけが持つ安らぎが、漂っている。座れば、さあ今日も美味しいものを、たらふく食うぞという気分が、体の奥底から沸き上がる。
頼むは、パリジャンの好物、昼食の定番「ステーク・フリット」1000円也。まずは滋味深いコンソメで、心を温めよう。次に、塩と酸がきっちり効いた、ヴィネグレットソースをまとったサラダで、胃袋を刺激しよう。
そしてステーキ。170g超の肩ロースは、バリッと焼かれ、さあ食べろと迫ってくる。どっさり盛られたフライドポテトは、おかわり自由。あとは脇目も振らず、肉にかぶりつけ。ナイフで切っては噛み、切っては噛む。肉を噛み締め、溢れる肉汁と脂を舌に広げ、肉食う喜びを募らせる。
おっと、300円のグラスワインを頼むのを忘れてはいけない。この1杯が、ビストロならではの享楽を、高めてくれるのだ。
40年の時を経た空間でいただく、1300円の充足。東京って、ステキだなあ。
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