マテリアル夫婦 Vol.15

結婚1年目で夫婦の危機。深夜0時、妻を裏切った男が向かった意外な場所とは


三枝マサル@人生の岐路


僕は、六本木にある自社ビルの屋上に立って東京を見下ろしていた。

『なぁマサル、あれほど言ったじゃねぇか。人のために生きろ、おごり高ぶるな、腰を低くしろ、感謝の気持ちを忘れるなってさ……』

後ろから、この世にいないはずの父の声が響く――。

僕の父は、社長だった。

社長といっても、地元の小さな会社だけれど、幼い僕にとっては憧れの存在で『お父さんみたいに社長になって億万長者になる』と、卒業文集に記した記憶がある。

しかしその後、父は人に騙されて多額の借金を負い、会社は倒産。その結果、父は家族を置いて帰らぬ人となった。

残された僕らは一気に貧しくなり、母はパートで学費を稼ぎ、女手一つで僕を育ててくれた。

父は、いつも笑顔でペコペコ頭を下げて、人のために生きていた。だから、こんなことになってしまったのだと思った。僕は父の生き様を反面教師として生きることを誓ったのだ。

『もう二度と貧乏にはなりたくない』

その一心で、ここまで駆け上がってきたけれど……。

突然、煌びやかな東京の景色が暗転し、闇深いブラックホールに吸い込まれていく――。



明け方、僕は汗だくで、社長室のソファの上で目を覚ました。

今日は、僕のスキャンダルが掲載される週刊誌の発売日だ。僕は今、人生の岐路に立たされている。

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