男と女の怪談~25歳以下閲覧禁止~ Vol.26

1回20万円の夜。平凡な主婦がハマった「夢の男」への課金地獄。行きつく先は…?


春・第六夜「ミーハーな女」


「こんばんは。んーと、ヒカリちゃん?はじめまして。今何してたの?」

“彼”が私の名前を呼んでくれたとき、全身に鳥肌が立ち、すぐには言葉を発することができなかった。

憧れの俳優とカメラ付きで直接話せるアプリと言っても、まさか自分が指名されるなんて思ってもみなかった。

「一条律」の顔をリアルタイムで拝みたいがために、アプリをダウンロードしただけ。

しかしその夜、何万人というファンの中から選ばれた“たったひとり”が表示される画面右上の枠に、突然自分の顔が現れたのだ。

「え…っと、あの、今…律くんの配信を見るために、急いでお風呂から上がってきたところで…」

震える手で、濡れた前髪を整える。

31歳のすっぴんを、彼と配信を見ている全員にさらすのは恥ずかしかったが、湯上りで頬がピンクに上気しているのが救いだ。

これまで配信を見ながら、選ばれたファンがしどろもどろになっている姿をみて、「あーあ、せっかく指名されたんだから、もっと実のあること言えばいいのに」と思っていたが、彼らとそっくり同じ反応になってしまった。

そのあと、彼が何か質問してくれたけれど、記憶が飛んでいる。

「じゃあ、陽花里ちゃん、夜遅くにごめんね、おやすみ。またいつか、話そうね」

スクリーンショットを撮ってもいいですか、と聞き忘れたことに気がついたのは、配信が終了し、震える手でスマホをベッドの上に置いたときだった。

…そこからだ。

私が、果てのない沼にハマったのは。

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