女といるのが向いてない Vol.2

久々に参加した食事会で…。大手外資勤務、手に入らないものはないはずの男が不甲斐なさを感じたワケ

とはいえ断るのも憚られ、仕方なく先にみんなを見送る構図になった。

「えー!お前、二人っきりとかずるいなあ」

酔った樹がそう言い残して、タクシーで去っていく。

「帰りましょうか」

すると女がそう言って歩き始めたので、仕方なくその後ろを追いかけた。


「美味しかったね」

「そうだね。最高だった」

会話は、続かない。

それを誤魔化すように、女はいろんな質問をしてくれる。この女も、サービス精神がすごい。

「エンジニアしてるって言ってたよね。やっぱり忙しいの?」

「まあまあ、かな」

「…あ、チョコって好き?上原に最高のショコラティエがあってね」

「へえ」

次第に僕は、絶望的な気持ちになる。

― こういう会話って、どうやって続けるんだっけ。

ここ1年在宅勤務になっていることもあって、親しくない人間と一対一でこんなふうに話すのが、本当に久しぶりなのだ。

自ずと歩くスピードが速くなる。こういう無駄な質問を、僕は過干渉かつ面倒だと思ってしまう。

そうだ。

元カノの麻里亜に対してすら、そうだった。彼女だって付き合った当初は、根掘り葉掘りいろんな質問をしてきたのだ。

「昨日何してた?」
「何のテレビ見た?」

でも気づけば、麻里亜はそのうちそういう類の質問を一切してこなくなった。僕が、鬱陶しがったから。当然、僕から彼女へも、そういう質問はしなかった。

フラれたあの日に言われた、麻里亜の言葉がまた再生される。

「私に、あんまり興味がないように思えるわ」

…ため息が出る。

恋愛には、相手への興味を尽かさないで、どんな小さなことでもお互いに知ろうとすること。それが必要みたいだ。

― そんなこと、僕には面倒すぎる。

そのとき黒Tの女が立ち止まり、急に「あ!」と小さく叫んだ。

「コンビニ寄るね!」

そう言うやいなや、女は「じゃあ、またね」と笑顔で手をあげ、ひらりとコンビニの店内へ入っていく。

逃げるように去った女の、長い髪。

自分への不甲斐なさがふつふつと湧いてきて、早くあの平和な部屋に帰ろうと早足でアスファルトを蹴る。黒Tの女が、もう会わない相手であることだけが救いだった。

…しかしご近所というのは恐ろしい。もう会わないというのは、とんだ計算違いだったのだから。


▶前回:婚約指輪を忍ばせて会いに行ったのに。その後彼女に告げられた、衝撃の一言

▶ Next:3月16日 火曜更新予定
平和な泰平の日常が、突然崩れ去っていく…。

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この記事へのコメント

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No Name
泰平、若干変わってるし気難しい所もありそうだけど、今の所好印象です!
四川麻婆豆腐に惹かれて行く所とか、女子にどんな人が好きか聞かれて
「あなた方に関係あります?」とか面白い。
2021/03/09 05:2976返信15件
No Name
来週、何か事件が起こるんだね。
2021/03/09 05:3031返信3件
No Name
これ季節って?
黒いTシャツ女
2021/03/09 06:0023返信1件
No Name
樹に僕なりの「助け舟」🤔🤔🤔

僕なりで誤魔化そうとしてるけど、助けて欲しいと思われてないのに助け舟はないな
2021/03/09 07:2916返信2件
No Name
チョコ好き?
とか確かに無駄な質問だ。
バレンタイン前ならまだしも。
2021/03/09 05:5912返信9件
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