太陽の光が、砂丘とリカの頬を真紅に染め上げた。
彼女は目に涙を浮かべ、首を縦に振った。
「マーくんは、いつも私が知らない世界を見せてくれるから、一緒にいると心の底からワクワクできるわ。これからも、あなたと一緒にいろんな世界を見てみたい」
その瞬間、全てが報われるような達成感があった。
若さも、美貌も、ステータスも、人気も、全てを持っている完璧な女。
それだけでなく、天真爛漫で、賢くて、芯の強さがある、中身だって最高な女だ。
「結婚式はカリブ海に浮かぶセントルシアのシュガービーチを貸し切ろう。それともフランスのシャトーにしようか。ドイツのホーエンツォレルン城も良いかもしれない。ヴァレンティノに知り合いのデザイナーがいるから、ドレスはオートクチュールをお願いしよう。子どもは当分作らずに、二人で世界中を旅しよう…」
昨年1年間は各方面への調整に奔走し、遂に2021年1月1日、リカは大手事務所から独立し晴れて僕の妻となった。
その事実が連日にわたって報道されたときの、高揚感が忘れられない。
日本中の男たちからの羨望の眼差しが、今でも目に焼き付いている。
リカが隣にいてくれるだけで、僕という人間が「いい男」だと証明されるような気がするし、隣で微笑んでくれているだけでパワーをもらえた。
しかしコロナの影響で、二人で語り合っていた未来は全て夢物語となった。
定期的に海外に行き、楽しいイベントを一つ一つこなし、僕の心に刺激を与えてくれるはずの予定が全て白紙に…。
幸せな結婚生活が始まるはずの新居で、僕はソワソワとした焦燥感に駆られていた。
なぜなら、結婚したことによって得られた僕の幸福感が、今日をピークに日に日に減っていくのではないかという恐怖に襲われていたからだ。
時計だって、車だって、マンションだって、美術品だって、手に入れた瞬間は高揚感と多幸感に包まれるが、それが同じ濃度で継続することはない。
急に怖くなった僕は、窓の外を見つめていたリカを後ろから抱きしめる。
「なぁリカ、子ども作ろうよ」
僕の人生に足りないのは、あとは子どもだけ。
最後に残ったそのピースさえ手に入れれば、幸せのパズルが完成できる気がしたのだ。
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▶NEXT:3月11日 木曜掲載予定
日本一の勝ち組となった妻・リカの本音とは
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