恭介:女はどうせ金だろ
『Reika:ごめん、好きな人できちゃった。まじ、ごめん!!あたしの荷物捨てちゃっていーから』
ーなんだこいつ。うざすぎ…
日帰りでサクッと温泉に浸かり、まさに箱根湯本から東京へ帰ろうというタイミングで見てしまった彼女からの一方的なLINE。
助手席にスマホを放り投げ、愛車のMINI ジョンクーパーワークスを一気に加速させた。相変わらず高回転の伸びが気持ちいい。
ゴリゴリのHIPHOPがタイミングよく流れ、ボリュームを上げると相乗効果で一気に気分が晴れる。
彼女と旅行に行く用のレンジローバーのイヴォークと、ポルシェ911も所有しているが、結局、こればかり乗ってしまう。
だが、このMINIに女を乗せたことはない。
たった今別れたばかりのレイカは、Instagramに胸やお尻ばかり載せるタイプの女だ。
承認欲求が凄まじく、どこへ行っても写真を撮りたがる。
テレビにも雑誌にも出ていないくせにInstagramのフォロワーはなぜか23万もいて、PR案件で稼いだ金で体のあちこちを整形している。
「恭介んち、カラッカラ。肌乾燥しちゃうから加湿器置きなよ。業務用の大きいやつ」
去年のクリスマスに、お望みどおり“ダイソンの加湿空気清浄機”を、レイカへのプレゼントとして自分の部屋に置いた。
わかっている。
別れた理由が、そのプレゼントのせいだということくらい。
レイカが欲しがっていたグラフのミニバタフライ シルエット ペンダントをあげていたら、今日だって一緒にドライブについて来ていただろう。
でも、どこへ連れて行けば喜ぶのか、どんな声で甘えるのか、何もかも簡単に想像がついてしまう女のために、何十万もするダイヤなど買うわけない。
横になっても流れない偽物のデカい胸も最初は興奮したが、今では異物が埋め込まれていると思うと気味が悪い。
それを彼氏のためではなく、赤の他人のために撮影しSNSに載せたがる心理も、恭介には全く理解ができない。
女は結局、金と自分自身が大好きな生き物なのだろう。
レイカにプレゼントした加湿空気清浄機は、今も恭介の部屋を潤してくれている。
確かに、部屋が適湿だと心地が良い。
別れた女と付き合ってて良かったことの断トツ1位が、自分が買ったダイソンだなんて可笑しくて思わず声を出して笑ってしまう。
自宅がある東新宿のマンションに到着すると、地下の駐車場の車寄せに車を停め係員に名前と部屋番号を告げる。
ここは、車のために住んでいるようなものだ。
駐車場が広く、バレーパーキングサービスがあり、無料の洗車サービスもなかなか便利で毎月必ず使っている。
ここに連れてくると、女はみな目をキラキラさせるくせに、それを必死に隠し"このくらいのマンション来たことあるし"って顔をする。
恭介は、その嘘くさい女の顔が嫌いではない。むしろ、可愛いとさえ思う。
高層階へ向かうエレベーターに乗り込み、レイカのLINEをブロックしようとスマホを手にしたその時だった。
『@ko___harunがあなたをフォローしました。』
Instagramの通知が目に入る。
ーこ、はるん?誰だ?
辛うじて非公開にはしていないが、数回しか投稿していないInstagramを知り合い以外がフォローすることは、珍しい。
@ko___harunのページに飛んでみた。
フォロワー数は650人で、アイコンにはハッキリと本人の顔が写っている。
カフェの写真や旅行先の風景に混じって顔写真もあるが、肌感がわからないほどに加工しすぎたものではなく安心する。
服からこぼれそうな胸や、自慢げに突き出しているお尻に見飽きていた恭介は、普通の女子に少なからず興味を持った。
ーもしかして、前にどこかで会った?
考えるより先に、指が勝手にメッセージを送っていた。
『恭介:フォローありがとうございます。どこかでお会いしましたか?』
それが、小春の作戦だとも知らずに…。
▶他にも:結婚願望が全くなかった32歳・独身貴族。突然、彼女の実家に挨拶に出向いた意外な理由
▶Next:2月13日 土曜更新予定
小春は恭介にある方法で接近を試みる…
この記事へのコメント
メッセージ送るなんて律儀だなー
と思ってしまった笑
外食やゴルフで散財したとはいえ、貧しくもなく大学まで出してもらったんだから。家のことを顧みず威張ってたのは良くないけどね。
お金持ちと結婚しなさいって。
勉強して自分で稼げるようになりなさいじゃなくて。