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  • 惚れた女に恋人がいた…!?恋に破れ絶望に打ちひしがれる男が、一発逆転できた理由

    寺田の背中を勢いよく叩いた人物。それは、営業本部長の八木正友。

    「おいおい、どうしたんだよ。シケた顔してるな」

    そう言って笑う八木は、いつもエネルギッシュだ。たしか年齢は47歳のはず。

    だが、いつもパワフルで若々しいそのルックスは、とてもアラフィフには見えない。

    「八木さん…。ビックリさせないでくださいよ」

    抜群に仕事ができ、人望も厚く、その上ルックスまで兼ね備えた八木は寺田にとっても憧れの男だ。

    しかし今は、彼の顔をまともに見ることができない。

    なぜなら寺田は大きな案件を落としてしまったばかり。だからビジネスパーソンとして完璧な彼に、とてつもない劣等感を抱いているということも、もちろんある。

    だがそれとは別に、もうひとつ顔を合わせたくない理由があった。


    それは数日前のこと。八木がとある女性と、いい雰囲気で歩いているところを見かけてしまったばかりなのだ。

    その女性こそ寺田が密かに想いを寄せている、ひとつ年上の先輩・木村真由佳。実は彼女のことをこれまでに何度も誘っている。

    だが、その都度やんわりと断られていた。

    ー木村さんって、八木さんと付き合ってるのか?

    社会人としても、男としても、彼に全て持っていかれるのかと思い途方に暮れていたのだった。



    「おい寺田。どうせボーっとしているなら、ちょっと俺に付き合えよ」

    八木は何かを察したように飲みに誘ってきた。連れて行かれたのは、オフィス近くのバー。

    「そのウイスキーを。15年の方ね」

    慣れた様子でバーテンダーに注文する彼の姿は、まるで映画のワンシーンのようだ。

    「それ、よく飲むんですか?」

    おずおずと尋ねると、彼は嬉しそうに微笑んだ。

    「…お前ももう30代だろ。そろそろ酒も、量より質だ」

    そのサマになる所作に、ますます劣等感を掻き立てられる。

    ―どうすれば、この人みたいな大人になれるんだろう…?

    しかし乾杯してもなお、2人の間には重い空気が流れている。気はのらないが、部下である自分が無言でいるわけにもいかない。

    沈黙を打ち破るため、寺田は口を開いた。

    「あの!八木さんって普段何かやってるんですか?いつもパリっとしてて、かっこよくて…」

    あまりに不恰好な質問をしたことに気がついて、思わず顔が赤くなる。質問をむけられた八木も、驚いたように照れ笑いを浮かべた。

    「ん?別に特別なことは何もしてないけど。…あ、でもひとつだけ続けてることがあるよ」

    そして、鞄の中からある物を取り出したのだ。

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