オフラインな私：“勝ち組な新妻”自慢が止められない女。彼女を襲った、非情な現実(1/3)[東京カレンダー]

オンラインで、キラキラした私生活を垣間見せる女たち。

豪華なインテリアや、恋人との親密な関係性、メイクや服装。

だけど画面越しに見せている姿は、本当の自分とかけ離れているのだ。

―オフラインの私なんて、誰にも教えられない。教えたくない。

リモートで働く女子たちのPC画面の裏側には、まさかの世界が広がっていて…？

Vol.1 天国と地獄のキッチン

名前：井原みずき
年齢：29歳
世帯：夫と2人暮らし

「ようやく引っ越し作業が終わったのよ～」

嬉しそうに自慢する井原みずきの声に反応し、留依（るい）はダイニングテーブルに置いていたPCの画面をチラリと見た。

画面に映し出されている彼女の部屋は、天井が高く奥行きがあり、たっぷりと日差しが降り注いでいるように見える。

―モデルルームみたい。いいなあ。

留依が働くIT企業では定期的に“雑談ミーティング“といって、在宅勤務ゆえのコミュニケーション不足を防ぐために、部署内でオンライン会議をしている。

この日雑談ミーティングで盛り上がったのが、新婚であるみずきの“新居について”だったのだ。

「料理が好きだから、キッチンが広くて気に入ってるんです。あ、そうそう。最近、おうちご飯を投稿するためにInstagramを始めたんですよ！良かったらフォローしてくださいね」

そう言って、彼女はスマホの画面をカメラに映す。その笑みは、まさに“幸せ”を体現したものだ。

「見てみますね。ありがとうございます！」

さっそくInstagramの検索画面を開き、みずきのアカウントを探し出した。投稿されている色とりどりの料理は見た目も美しく、手が込んでいるのがわかる。

留依は、さらにその中の投稿を数枚タップしてみた。すると…。