振り返れば、そこにいる Vol.1

「私のことアリじゃなかったの?」オトせたと思っていた男の態度が、翌朝になって急変したワケ

彼のことが、好きで好きでたまらない。…だから私は、どこまでも追いかけるの。

好きすぎるせいで、何度も連絡してしまう。愛しいから、絶対に別れたくない。彼を離したくない。

こんな愛し方は異常だろうか…?だけど恋する女なら、誰だってそうなる可能性がある。

「私の方を振り向いて。ちゃんとあなたの、そばにいるから」

これは、愛しすぎたゆえに一歩を踏み間違えた女の物語。


―寝顔、カッコいいな。佐伯さんと、まさかこんな風になれるなんて夢みたい。

夏川仁美は、隣で眠る佐伯春樹の横顔を見つめる。

スッと通った鼻梁も長いまつ毛も、佐伯の全てが愛しく思えてきて、仁美はにんまりと微笑んだ。

佐伯は仁美にとって、なかなか手が届かない“憧れの会社の先輩”といった存在だった。

だから、そんな彼が自分の部屋で寝ていることが信じられず、自分の家であるはずなのに、なんだか別の人の部屋にいるような感覚がする。

カシウエアのブランケットを手繰り寄せながら、そんなことをぼんやりと考えていたそのとき、ふと彼が目を覚ました。

「仁美ちゃん、おはよう」

彼は慣れた手つきで優しく仁美の腰を抱き寄せると、左手で頭を撫でてくる。ゴツゴツとした男らしい手に髪を撫でられ、仁美は思わずうっとりとした表情になった。

「ねえ、佐伯さん」

仁美は佐伯に抱きしめられたまま、甘えたような声を出す。

「んー?」

「次、佐伯さんが大阪に来たときも、またこうやって会えるかなあ?」

佐伯の真似をするように、彼の柔らかい黒髪をそっと撫でながら、仁美は問いかける。

「…うん、会えるよ。毎回は無理かもしれないけどね」

佐伯がそう言った瞬間、仁美は目の前が真っ暗になったような気がした。

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