男と女の怪談~25歳以下閲覧禁止~ Vol.6

「彼女を抱いたら、全てどうでもよくなった」中毒性を持つ女に、35歳・広告代理店マンが溺れた結果…

男と女の、珠玉のラブストーリー。

秋の夜長、「その先」のことを語りましょうか。

この物語の主人公、あなたの知り合いだと気づいても、
どうか、素知らぬフリをして―。

▶前回:「息子は、私の作品なのに…」田園調布妻がどうしても赦せなかった、若い彼女が犯したタブー


第6夜「溺れる男」


「…その本、いつまで読んでるの?」

MacBook Airをわざと音を立てて閉じ、バーカウンターの横で本を読んでいた彼女に声をかける。するとチラとこちらを見た。

計算通り。

すかさず、体を向けて彼女の顔を覗き込んでから、手にしていた本に目をやる。

「『モンテ・クリスト伯』か。とっても『現代的』なセレクトだね」

年季の入った文庫の表紙には覚えがあった。学生時代に読んだ復讐モノの金字塔。

「他人の読書傾向に口を出してくるなんて、品のない男」

彼女はゆっくりとメガネを外し、意外なほどに大きく潤んだ目で、こちらを見た。

化粧気はない。必要がないくらい、肌が冴え冴えとしていた。シンプルだか、洗練されたシャツにタイトスカート。言葉にトゲはあったが、声質は驚くほどに柔らかく甘く、なぜか懐かしいような気持ちになる。

「今日はもうフラれたんでしょ?僕と一杯どう?」

僕がカウンターでクライアントにメールをしている小一時間、彼女はずっと本を読んでいた。僕がすかさず席をつめて隣に座ると、彼女は頬杖をついて、また本に視線を移した。まるで視界に入ってもいないと言いたげに。

狩猟欲というのか。久しぶりに、何が何でも落としにいきたいと、その時思ってしまった俺を、今となっては本当に馬鹿だったと思う。

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