今年こそ、あらゆるチャンスを活かして運命の人と出会う!
そう決めた、2020年春。
奈美の計画は、初っ端からガラガラと音を立てて崩れ去った。新しい出会いどころか、同僚とさえ思うように会えない日々。お食事会も激減した。
「このままじゃ“失われた1年間”になるだけじゃない…?」
年末に向け、焦る奈美。果たして、目標は達成できるのか?
―今年も、あっという間に12月…何もしないまま、終わっちゃう…。
奈美は焦っていた。悩んでいた。
午前8時50分。カフェラテをテイクアウトし、丸の内にある要塞のようなビルを見上げてため息をつく。
この大手総合商社に内定したときは、ワークライフバランスをとりながら、27歳くらいで結婚。もしかして夫の駐在についていって…なんて漠然と描いていた。
しかし思いのほか仕事が面白く没頭しているうちに、20代は光の速さで過ぎていき気が付けば29歳。
「今年こそ、絶対に運命の人に会う!」
そう決めていた2020年だったのに、運命の人プロジェクトのすべてが、吹っ飛んだ。
何せ“人に会う”機会がない。職場の飲み会もお食事会も激減。そんな中で、奈美は心のどこかで、今年は“こんなご時世だから”婚活がうまくいっていないのも仕方がないと諦めていた。
ところが…。
年の瀬になり、なんだかんだ言っても友人たちは、“こんなご時世でも”ちゃんと彼氏ができていることに気がついてしまった。
そこに追い討ちをかけるように仲良しの後輩に言われた、とある指摘。その言葉を聞いて、もう言い逃れはできないと、奈美は痛感させられたのだった。
―これってもしかして…私に原因があるの?