タイトなスカートに7cmヒール。
どんなに忙しい朝でも、毛先は緩くワンカール。
モテることだけに執着し、典型的な“量産型女子”を演じる円花(まどか)。
しかし年下の起業家男子に恋した女は、思わぬ人生の選択をすることに―。
「円花、例のマッチングアプリの人、会ってみた?」
「んー、まだ。LINEでやり取りはしてるんだけど、なんかピンと来ないんだよね…」
「いやいや、会わないと何も始まんないでしょ」
「まあ、そうだけどさあ」
『A16 TOKYO』でパスタをくるくると巻きながら、雨宮円花は浮かない顔で返事をする。
「そんなこと言ってると、いつまで経っても決められないまま年だけ取るよ?」
―知ってるよ、そんなこと!イチイチ指摘してこなくてもいいじゃない。
大学時代の同級生である加藤穂香の言葉に、円花はイライラを募らせる。
「若さは年々目減りする価値」だなんて、そんなこと分かっている。だけど、この27年間でジム通いやエステといった “自己投資”にかけた金額はダテじゃない。
その投資分を回収するべく、若干の高望みをするくらい、いいじゃないか。
そんな本音を隠して、円花のキャラに似合う猫なで声で「う~ん、もうちょっと選びたいんだよね♡」と、かわいらしく答えた。
そう、円花は生粋のにゃんにゃんOLであり、ぶりっこ上等の“量産型OL”なのだ。
花柄総レースのタイトスカートに、ボディラインに沿う白ニット。東京駅からオフィスに歩いてくるまでに、ザッと15人くらいは被っていそうな、ありきたりなファッション。
でも、これも円花の戦略。
手っ取り早くモテて、将来の夫候補をゲットし、さっさと専業主婦になる。そのための量産型OLだ。
…だけどたまに、こんな自分が窮屈になる。
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