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  • 「え…?これって私だけ?」オンライン飲み会中の27歳女に届いた、年上男からの秘密のチャット

    「……お、倉本」
    「流川さん!久しぶりですねっ!」

    喜ぶ気持ちを隠し切れなかったため、声は普段より数トーン高くなっていただろう。しかも流川は立ち止り、こちらをじっと見つめてきたのだ。

    ―えっ……なにこの雰囲気!?!!もしかして、“倉本に久しぶりに会えて嬉しい”とか…!?いやいやまさかそんなことないよね……!!!

    「いや……」

    麻美の胸の高鳴りは最高潮に達したが、流川は表情一つ変えずに続けてこう言った。

    「……倉本。口のここ、何か緑の粒がついてる」
    「…!!!!!」

    慌てて、デスク近くにあった鏡をのぞき込む。

    見ると口の端には、テイクアウトのランチに添えられていたフライドポテトのハーブソルトがついていたのだった。



    ―あーあ…。恥ずかしい。

    思わず、高級スーパーで1人声を出しそうになる。

    麻美は、今年で27歳。

    帰国子女で語学堪能なことを活かし、青山学院大学を卒業後は、戦略系の外資コンサルティングファームのバックオフィスとして勤務。今年で5年目だ。

    麻美は顔が特段美形という訳ではない。

    だがバックオフィスという仕事柄、清楚なファッションと艶のある肌と髪、そして明るい笑顔を心がけているため「みんなから愛されるタイプ」と評されることが多い。

    でも最近、自分の長所であるはずの「万人受け」が嬉しくない。

    つい笑顔で感じよく接するクセがついているので、“かまってちゃん男”などを引き寄せてしまうのではないだろうか?と思い始めているのだ。

    だが麻美はクヨクヨと悩む性分ではなかった。

    ―何か、最近ぱっとしないっ!新しいことでも始めてみようかな?

    そんなことを考えながら、いつも1人飲みのアテにしているチーズを切らしていることを思い出し、乳製品の棚の前で立ち止まった。

    するとそこに今まで見たことのない、ヨーグルトの容器のようなものが目に入ってきた。

    『明治クワルク』?クワルクってどこかで聞いたことがある…。

    “クワルク”はドイツの日常食として食べられる、フレッシュチーズ。小学生の時、銀行員である父親の転勤で住んでいたベルリンでよく食べていたことを思い出した。

    懐かしく感じ思わず手に取る。

    脂肪ゼロで、味はフレッシュチーズ、フレッシュチーズ&ハーブソルト、フレッシュチーズ&トマトバジル の3種類。パッケージも可愛く、3つ冷蔵庫に並べるとテンションが上がりそうだ。

    ―買ってみよう♪

    麻美は『明治クワルク』を3つ、カゴに入れた。



    それから、ちょうど1か月後―。

    「それでは、乾杯しましょうか」

    今日は、会社のオンライン飲み会。

    チームに新たなメンバーを迎える歓迎会で、流川も珍しく参加していた。

    ―今日は、流川さんに見られてもばっちりなはず…!

    実はあの日から、麻美は新しい美容法を次々と試していた。

    ずっと気になっていた炭酸ジェルパックを買ったり、好きなYoutuberがおススメしていた筋膜リリースという新しいトレーニングを始めたり。

    また在宅ワーク後の1人飲みのお供を、脂肪ゼロの『明治クワルク』に切り替えた。ヨーグルト感覚で気軽に食べられるし、簡単な料理に添えても美味しいので、おつまみレシピも広がったのである。

    プライベートが充実していると、自然と仕事にも張りが出るのだろうか。

    この日も新しいチームメンバーが年の近い女性だったので、麻美は中心になってその場を盛り上げた。すると途中、よくオンライン飲みをする後輩が、興味津々と言った感じで聞いてきた。

    「麻美さん、今日は何食べてるんですか??」

    「今日はね、ジャガイモ茹でて、『明治クワルク』を添えてるの」


    「クワルク??」

    「ドイツでよく食べられてるフレッシュチーズなんだけど、栄養満点で脂肪ゼロなのよ」

    「へぇ~!初めて聞きました!メッセでURL送って欲しいです♡」

    流川はそんなやりとりを、いつも通り何を考えているか分からない表情で聞いている。

    ―流川さん、会話に入ってこないなぁ…。やっぱり私に興味ないんだろうなぁ。……ってダメ!こういうときこそ笑顔でいよう!笑う門には福来る、よ!

    自分をそう奮い立たせたちょうどそのとき、麻美のスマホが振動した。

    「ちょっとごめんね」

    会が大分盛り上がっていたこともあり、麻美は一言謝り、その場を離れることにした。

    電話の主は、 例の“かまってちゃん”な商社マン。

    好きなタイプではないのに、あれ以来、何となくやりとりが続いていた。

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