妻のベール Vol.7

「最初から、妻は財産狙いだったのか?」夫にいきなり離婚届を突きつけた女の、本当の狙いとは

結婚相手に経済的安定を求める女性は、多いと聞く。

結婚相手の職業人気ランキングを見ても、その通りと言えるだろう。

しかし中には、夢追う夫を信じ、支える“献身的な妻”というものもいる。

IT社長として成功した柳川 貴也(やながわ たかや)の妻・美香もそうだ。

一緒に貧しい時代を乗り越え、今でも夫の一番の理解者。彼女の支えがあったから成功出来たと言っても、過言ではない。

しかし、夫の思いとは裏腹に、財を手にした妻は豹変していく。欲望のままに。

◆これまでのあらすじ

実は、コンプレックスに苛まれて生きてきた美香。変に吹っ切れた美香は、貴也にあることを突きつける…?


「これ」

翌日どこかに出かけていた美香が、帰ってくるなり渡してきたのは、緑色の紙…離婚届だった。

妻が記入するべき右半分の欄は、すでに記入が終わっており、ご丁寧に印鑑も押してある状態だ。

「え…?」

突然の出来事に、貴也は動揺した。

美香が激昂した昨夜からずっと、どうしたら彼女は機嫌を直してくれるだろうかと考えていた。

−確かに、我慢させていたのかもしれない…。

貴也はそう思い、彼女のことを理解出来ていなかったことを大いに反省していたのだ。

だからこそ、今日はきちんと話し合おうと思っていた、矢先の出来事だった。貴也は呆気にとられ、困惑気味に尋ねる。

「どういうことだ…?」

ところが美香は、「何か問題でも?」という冷たい目でジロリと睨みつけるだけだ。

「もう決めたから。早めにお願いね」

それだけ言うと、さっさと寝室に戻ろうとしている。

突然離婚届を持ってきて、サインしろだなんてあんまりではないか。貴也が慌てて呼び止めようとしたとき、美香は振り返って、吐き捨てるように言った。

「私、このマンションいらないから」

いきなり何を言い出すのだろうか。思わず貴也は、心の中で毒づいた。

−いらないも何も、お前は一銭も払ってないじゃないか…!

しかし数瞬の後、ハッと気がついた。美香はおそらく、離婚に際しての財産分与のことを話しているのだ。

「もしかして…財産のことか?」

貴也のその一言に、彼女の足がピタリと止まった。

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