
夏が終わっても食べ頃!? 鱧への認識が改まるひと皿
祇園祭に天神祭―上方の夏祭りに欠かせぬ食材といえば鱧。“梅雨の水を飲んで旨くなる”と言われているように、夏が旬であることは周知の事実だが、実は秋にも旬を迎えることをご存知だろうか。
産卵後、冬に備えて食欲が旺盛になる9〜10月の鱧は、体の表面が金色を帯び、身も肥えて脂もグッと乗ってくる。俗に“金ハモ”などと呼ばれるこの時期が、いわば鱧のもうひとつの旬なのだ。
その“金ハモ”ならではの深みのある味わいを生かした一品が、ご覧の「鱧のグリエ 鱧のコンソメ仕立て」。川手寛康渾身の意欲作だ。
8年前に『京味』で味わった鱧尽くしの料理に感動。真の美味しさに開眼したという川手シェフ。
「僕にとって鱧の魅力は、骨切りした身の、しっとりとした独特の食感と香り」だそうで、その芳ばしさを引き出すため、湯引きではなく燻香を纏わせるように皮目だけを炭火でパリッと焼き上げている。それも、焦げぬように二回に分けて焼く細やかさ。炙られるうち身から滲み出る脂も、今が旬の鱧ならでは。
力強くもデリケートな旨みを、鱧の骨で取るコンソメが、より重層的な味わいへと引き立てる。