洗練されたセンスと親しみやすい雰囲気を併せ持ち、地に足のついた大人たちに愛される世田谷。
最新号で表紙を飾る、女優・広末涼子さんが纏う空気とこの街の落ち着きは、どこかシンクロしているような気がする。
そんな彼女と、路地裏にひっそりと佇むレストランへ繰り出した―。
広末涼子さん、世田谷の魅力って何ですか?
「実を言うと、世田谷に対する見方が変わったのは最近のことなんです」
広末涼子さんはちょっと照れ臭そうな様子で話を切り出した。
「仕事に全力投球していた若い頃は動きやすさ重視で行動拠点を選んでいて、刺激を求めるようなところもあったので、世田谷は物理的にも精神的にも遠い存在でした。
それが、年齢を重ねて、一人の女性として生きることを大切にしたいと思うようになったら、アットホームな雰囲気を漂わせるこのエリアに惹きつけられるようになってきて。
なんと言うか、ここでは頑張りすぎなくていい。肩の力をふっと抜いて、大人の時間を心置きなく楽しめるんですよね」
そうかもしれない。たとえば銀座や六本木も大人に相応しい街には違いないけれど、そもそも繁華街とはほとんどの人にとって非日常的な空間だ。
一方で、世田谷は基本的に住宅地だ。そこには日常感が溢れている。だからこそ、自然とリラックスできるのだろう。
では、そんな世田谷で広末さんはどんなふうにのびやかな時間を過ごしているのか。水を向けると、彼女は口角をキュッと上げていかにもうれしそうに語り始めた。
「今まで、子連れだと外食するのはハードルが高いなあっ思っていたのですが、世田谷には受け入れてくれる店が多いとママ友さんが教えてくれて、いろいろと開拓しているところです。
それから、路地裏を散策するのも楽しい。大通りから一本入ると個性的な店が点在しているんです。
ここ『NATIVO』のロケーションもまさにそんな感じですよね。控えめな佇まいもすごく気に入りました。きっと、いい大人たちが集まってくるんでしょうね」
そういえば、撮影中、広末さんはきょろきょろと店内を眺めまわし、オープンキッチンでシェフが料理を準備するのを見守りながら「楽しそう」を連発していた。
あれにはいったいどういう気持ちが込められていたのだろう。ふと気になって訊ねてみると、彼女は言葉を選ぶようにゆっくりとこう言った。
「女優業を何歳まで続けるかわからないけれど、チャンスがあったらいつか小料理屋をやりたいなあって」
思いがけない発言に驚いたが、妙に頷けてしまった。
というのも、広末さんの料理好きは知られたことで、毎朝、子どもたちのためにお弁当を作っているそうだし、よく自宅に友人たちを招いてホームパーティをやっているという。
てきぱきと立ち働く女将ぶりがなんとなくイメージできたのだ。