年下男が思わず惚れた…?年収1,000万・高嶺の花の28歳女が見せた“隙”とは
朝美が見つけた「二つのアイテム」とは?
以前はメイクをした後の自分を見ると晴れやかな気持ちになっていたというのに、最近はなぜか気分が高揚しない。
ーあ、ヤバ。行かなきゃ。
時計を見ると、もう家を出なければいけない時間だった。朝美は心のモヤモヤをかき消すように、急いでバッグを掴んで玄関へと向かった。
◆
「野崎さん、金曜に提出してもらった資料、週末に見たけど、ミスが多すぎる。今日のタスク一旦ストップして、最優先で直してもらえる?」
始業ぎりぎりに駆け込んできた後輩、野崎レイナ(23)に朝美がそう声をかけると、彼女の顔には、朝イチに捕まって面倒、と書いてあるようだった。
「わかりました…」とうなずくものの、わかりやすい不満顔だ。
昨年レイナがバックオフィスの事務担当として入ってきたとき、その華やかでキュートな容姿と人懐っこい性格であっという間に男性陣を味方につけた。
朝美のようにコンサルタントとして働く女性は、20代で年収1千万を超えるため、自分への投資も充分だ。よってたいていは美しく洗練されており、オシャレではあるが、一筋縄ではいかない意志の強さを感じさせる。
一方のレイナは、朝美とは真逆の「最強キラキラOL」。朝美は、今日のようなことが起こるたびに、「あー、また嫌われたかな」と思うのだった。
―でもチームリーダーとしては、野崎さんにも成長してもらいたいし…。
レイナの反応を思い返して、ひそかにため息をついていると、隣のデスクから声がかかる。
「森川さん、もし資料が必要なら、これ使ってください」
クールな声の主は、優秀な後輩であり、若手コンサルタントの樋口翔平(26)だった。
PCに届いた樋口からの新着メールを開くと、そこには完全なデータがそろっている。
「ありがとう、樋口くん」
しかし翔平はすでに自分の仕事を始めている。
たいていはこんな調子。仕事ができるうえに容姿も良いが、つかみどころのない男。なんとなく同僚として仕事の出来不出来を査定されているような気がして、翔平と一緒にいると少し落ち着かない。
朝美は思わず、今日三度目のため息をもらす。彼と別れて以来、なんだか全てが、少しずつ上手くいかない。
重たい気分のまま、朝美はクライアントの会社へ出かける準備をするのだった。
◆
「森川さん、なんかちょっと…疲れてる?」
「え!?すみません…私、ぼんやりしてました?」
もう何回も顔を合わせているクライアントが、会議の終わりに心配そうに朝美のところにやってきた。
「いえ、内容は言うことないですよ、短時間でここまでまとめてくださって。ただ、なんだかちょっと…お顔が疲れて見えたから、無理させちゃったかと心配になって」
「お気遣いありがとうございます。大丈夫です、また来週もよろしくお願いいたします」
朝美は笑顔で頭を下げながら、昨夜の夢見が悪かったせいだと心の中で元カレに毒づく。
でも確かに、この3ヶ月チームリーダーに昇格したこともあり、仕事に打ち込みすぎたかもしれない。フラれたことを思い出したくなかったという事情もあった。
今夜はなんとか仕事を切り上げて、アロママッサージにでも寄ろう。そんなことを考えながら化粧室に入り、鏡に映った自分の顔をまじまじと見つめた朝美は、小さく悲鳴をあげた。
金沢出身の朝美は、子どもの頃から、白くてキメの細かい肌だといつも褒められてきた。この前別れた彼だって、ずいぶんと熱心に称賛してくれたポイントだったのだ。
だが今、あらためて自分の顔をじっくり見ると、毛穴が開ききっている。
ーそういえば、毛穴が目立つと顔が暗く見えるって聞いたことある。それだ…!
ちょっとケアを怠ったにせよ、毛穴が目立ってしまうようなことはこれまで一度もなかったのに。
―これは…早急になんとかしなくちゃ。
朝美はくすんだ頬に手を当てながら、あれこれと頭の中で対応策を巡らせるのだった。
◆
「あった…!これこれ!」
話題のアイテムがそろうコスメショップに、閉店ぎりぎりに駆け込んだ朝美は、コフレドールの『スキンイリュージョンプライマーUV』を見つけ思わず声に出してつぶやいた。
なんとか19時半に退社し、1時間ほどスタバで真剣にネットサーフィンした結果、現状を変えるために大事なのはベースメイクという結論に達した。
そしてさらに、サンプルを試したインスタグラマーや美容家が話題にしていた新商品、『スキンイリュージョンプライマーUV』ならば、瞬時に毛穴をカバーし、光をまとうような仕上がりになるとある。
さっそくショップで試してみると、毛穴がカバーされ、くすんでいた朝美の肌がつるんと明るくなったように感じられる。
―こんな肌の仕上がり、久しぶり!
思わずテンションが上がった朝美は、同じコフレドールの『ネオコート ファンデーション』も購入する。完成度の高い下地の効果を最大限に発揮してくれるだろうと期待しながら、朝美は弾む心で、ショップをあとにした。
ー1週間後ー
この日以来、朝美の「風向き」には変化が訪れていた。