恋のアプリ Vol.3

「私、本命彼女じゃなかったの?」30歳の完璧美女が、男のバスルームで目撃したものとは

食事会より効率的で、紹介よりも気軽な出会いの手段。それは、「マッチングアプリ」だ。

インスタントな出会いと割り切るか、運命の人に出会える可能性を信じるか。全ては、使う人次第。

今日もこの東京のどこかで、出会いと別れが繰り返されているのだ。

お送りするのは、『東カレデート』を通じて知り合った男女のラブストーリー。一体どんな結末が待っているのか…?

◆これまでのあらすじ

アプリで出会った男性・翔吾とのデートがうまくいかず、自分の女としての価値に自信を無くしていく沙也香

デートの帰りに声をかけられた男に優しくされ、心を動かされる。

一方、沙也香が憧れる美女・夏織が抱える悩みとは...?


拓巳と出会ったのは、2年前の美容外科学会。

美容皮膚科のナースをしている私は、勉強のために参加させてもらい、たまたま隣で講義を聞いていたのが拓巳だった。

「そんなにきれいな顔をしていたら、手術の話なんて退屈でしょ?」

フランクに話しかけてきたので、最初は有名な美容外科医だとは気づかなかった。

学会の中盤になって、講義を行うために立ち上がった彼は、若いのに堂々とスピーチし、質疑応答も難なくこなしたあとで、スマートに私の連絡先を聞いて立ち去ったのだ。

何回か食事をして、お互いのことを話して。同じ美容医療に関わっていることもあり、私たちが深い仲になるのに時間はかからなかった。

「夏織、今日は僕が夕食を作るから先にお風呂に入っておいで。夏織が好きそうな入浴剤も買っておいたよ」

今日はお互い仕事が休みなので、六本木にある拓巳のマンションに来ている。

拓巳は、出会った時からずっと穏やかでとても優しい。だけど、最近その優しさや気遣いが妙に不自然で、違和感を感じている。

職場へ車で送り迎えもしてくれるし、取材や手術で相当疲れているはずの翌日に、自ら苦手なはずの料理をすると言い出し、どこから入手してきたのか、私が好きな日本酒・新政No.6のX-typeまで用意していた。

「ありがとう。じゃあ、お先に」

そう言ってバスルームに向かうと、嫌な予感がした。

なんとなく私や拓巳じゃない他の誰かが、ここを使ったような気配がしたのだ。

私はオーガニックのシャンプーとサロン専売のシャンプーを気分で使い分けているが、ここ最近はずっとオーガニックの方ばかりを使っている。

だけど、サロン専売の方のボトルが手前に来ていた。

それだけで十分に気持ちが悪いが、よく見ると赤茶色の髪の毛がボトルについている。私も拓巳も、髪は染めていない。

ーやっぱりそうか。

付き合おうという言葉こそなかったが、そんなことを気にすることもないほど拓巳は私にべったりだった。だから、きちんとした彼女として扱ってくれている。そう信じていた。

だけど本当は、ずっと私だけがそう勘違いしていたのかもしれない。

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